EXHIBITIONS

磯谷博史「パンゲアの破片 / Shards of Pangaea」

板室温泉大黒屋サロン
2025.11.02 - 11.30

磯谷博史 パンゲアの破片06 2025年

 板室温泉大黒屋サロンで、磯谷博史の個展「パンゲアの破片 / Shards of Pangae」が開催される。

 磯谷は1978年東京都生まれ。東京藝術大学で建築を専攻後、同大学大学院およびロンドン大学ゴールドスミスカレッジで美術を学ぶ。写真、彫刻、ドローイングなどを通じて、知覚の複数性と時間の多様な性質を再考する制作を行っている。

 本展「パンゲアの破片 / Shards of Pangaea」では、新作「パンゲアの破片」シリーズ14点と、「着彩された額」シリーズの小作品7点を展示する。磯谷は写真や彫刻をもちいたインスタレーションを通じて、認識の複層的な構造を探る制作を続けてきた。

 展示の中心となるのは、オーストリア・ロースドルフ城(Schloss Loosdorf)で撮影された写真作品だ。中世に起源をもつこの城は、1834年にピアッティ家の所有となり、以降一族が収集した陶磁器コレクションを伝えてきた。17世紀以降にヨーロッパへわたった東アジアの古伊万里や景徳鎮の陶磁、マイセンやウィーンなど欧州各地の名窯を含むこのコレクションは、「白い金」と呼ばれた陶磁をめぐる東西交流の象徴として知られている。

 第二次世界大戦末期、城は旧ソ連軍に接収され、地下に隠された陶磁器の多くが破壊された。戦後、砕かれた破片は「陶片の部屋(Scherbenzimmer)」に集められ、戦禍の記憶として保管されている。展示される写真作品は、この部屋に残された陶片をミルクに浮かべて撮影したものを中心とする。