EXHIBITIONS

川本実果「水影 - Double Reflection」

iti SETOUCHI it’s CUBE
2025.04.19 - 05.11

川本実果 水影 - Double Reflection(1/2) 2025 帆布、発泡バインダー、樹脂顔料 970 × 1620 mm

 iti SETOUCHI(福山市)のオルタナティブスペース it’s CUBEで、川本実果による個展「水影 - Double Reflection」が開催されている。

 川本実果は1999年広島県生まれ。2022年に広島市立大学芸術学部デザイン工芸学科染織造形分野を卒業、2024年に同大学大学院芸術学研究科博士前期課程造形芸術専攻を修了している。主な個展に「Fleeting 」(gallery G、広島、2023)、主な受賞に広島市立大学卒業制作優秀賞・芸術資料館買い上げ、広島市立大学修了制作優秀賞、FACE展2023オーディエンス賞など。

 本展は、発泡バインダーを用いる独自の技法で平面作品の制作を行う川本の新作展となっている。本展で川本は、水がもたらす光の現象に着目し、イメージとしての表現の可能性を探る。

 瀬戸内海に面し水源豊かな広島県で生まれ育った川本にとって、水というモチーフは幼少期から親しみを持って関心を寄せる対象であった。そして、広島市立大学芸術学部で工芸を専攻し染色を学んだ川本は、素材に対する実験に取り組み、発泡バインダーを用いて水面の波紋を表出する、独自の平面表現の様式を生み出す。

 川本は、2023年から制作を行ってきた「Reflection」シリーズにおいて、水がもたらす、ふたつの現象に着目。ひとつは風景が水面に映りこむ現象で、もうひとつは水の反射光が壁などに照り返す現象である。これらは、光学的には光の反射の法則で説明されるもので、どちらも一般に「水の反射」と言い表される。水面と周囲の風景が相互に影響しあうこれらの現象は、川本にとって光の存在と知覚のあり方について考える入口となっている。

 本展では、発泡バインダーの作品に加え、布の織り目の動性を活かして光のゆらぎを表現した新作も発表。工芸と絵画、ふたつの領域にまたがって創造性を探求する川本の新たなアプローチが提示される場となっている。