EXHIBITIONS

多和田有希+福本双紅:「空の香」

2025.03.06 - 03.29

メインヴィジュアル

 艸居で、多和田有希、福本双紅による展覧会「空の香」が開催されている。

 本展では、写真家・多和田有希と陶芸家・福本双紅が、写真と陶芸の融合点を探求してきた成果を発表。

 2020年、京都芸術大学の教育現場から生まれたふたりのコラボレーションは、異なるメディアの可能性を拡張しながら、写真と陶芸に共通する言語や感覚の存在を問い続け、その対話を通じて新たな表現の可能性を追求してきた。本展では、その探求の成果として、写真と陶芸を用いた新作の参加型インスタレーションを発表。コラボレーション作品に加え、各作家の個別作品もあわせて展示している。

 多和田は、写真性に根づいた、日常とは異なる次元のコミュニケーションを探求、実践し続けている。芸術療法や民間信仰のリサーチをもとに、写真の表面を削る、燃やすといった物理的な介入を施す独自の手法を用いて制作。また、母や母系家族などの他者と協働する制作を通じて、新たな関係性や記憶の層を浮かびあげることにも取り組んできた。こうした手法によって、本来写真が持っていたアウラや魔術的な力を取り戻そうと試みる。

 福本は、陶芸を基盤としながら、その枠組みを超えた表現を探求する作家だ。淡く繊細な釉薬表現を特徴とし、硬質な印象を持つ磁器に柔らかさや温かみを引き出し、独自のアンビバレントな魅力を創出。また、焼成の過程で生じる歪みを受容する造形方法によって、作家の意図と偶然性が共存する作品を生み出す。

 本展では、実験的なインスタレーション《The Scent of the Sky》を展示。本作では、様々な鑑賞者の介入を受け止めながら変容する作品のあり方を提示し、最終的な完成のタイミングや形態を購入者が選択できる構造を持たせている。所有という行為そのものが作品のプロセスの一部となり、作品の境界や存在の在り方を問い直す試みとなる。