EXHIBITIONS
第14回公募セレクション作品
藤林彩名「狸のいる風景」
ソニーイメージングギャラリーで、藤林彩名による個展「狸のいる風景」が開催されている。
藤林彩名は1995年埼玉県生まれ。2017年に日本写真芸術専門学校フォトフィールドワークゼミを卒業。2021年、恵比寿でメンバー9名とともに自主ギャラリー・Koma galleryをオープン。Koma galleryをベースに年に3回ほど作品を発表している。
本展に際して、日本たぬき学会の村田哲郎は次のように述べている。
「『狸のいる風景』は、写真家・藤林彩名が日本全国を旅しながら撮影した狸たちを集めた、ほかに類を見ない魅力的な写真展です。そもそも『狸って、そんなに全国にいるの?』と疑問に思う方もいるかもしれませんが、その普及はじつに全国津々浦々に及んでいます。私は街角狸研究家として狸の置物の分布を調査し、実地調査やSNSを駆使してその広がりを追い求めています。その結果、全国各地、都道府県単位で言えば全47都道府県に狸の置物が広がっていることがわかりました。同じく置物の世界で招き猫の生産地として知られる愛知県常滑や、シーサーが広く知られている沖縄でも、狸の置物は確かに存在しているのです。
その狸の9割以上を生産しているのが滋賀県甲賀市信楽で、年間に約10万体もの狸が製作され、それが日本中に広まっています。この狸たちは民家の軒下や店舗の前など様々な場所に飾られているのですが、これほどまでに狸の置物が普及しているのは、世界中どこを探しても見あたらないユニークな日本文化の一環と言えるでしょう。
この写真展では、そんな狸の存在を藤林さんの独創的なフレーミングを通して鑑賞することができます。狸たちは日本の街角に馴染みすぎているために、我々がその存在に気付かないまま通り過ぎてしまうことが多いかもしれません。実際、実家に何十年も狸の置物があったにもかかわらず、最近まで(私と狸の話をするまで)気づかなかったというエピソードもあるほどです。それでも狸たちは、人々に福をもたらす縁起物として、健気に微笑みを浮かべ続けているのです。
藤林さんの写真を通してとくに感じられるのは、狸と風景の絶妙な調和と距離感です。狸が街角に自然に馴染んでいる様子は、日本に住む人々が特段意識をしない日常の風景とも言えます。藤林さんの写真は、狸と風景のどちらも同じくらいの重要性でとらえており、そのバランス感覚が彼女の独自性をきわだたせています。これは私のような狸研究家にはとてもできないことで、どうしても狸自体のフォルムや特徴に目を奪われてしまいがちです。しかし、少し距離をおいて風景全体を眺めてみることで、かえってこの場所に狸がいることの意味や、持ち主の方の思いにも心を巡らせることができるのです。
『狸のいる風景』は、日本中に広がる狸たちの存在を通じて、日本の文化や風景に対する新たな視点を提供してくれます。藤林さんの写真が教えてくれるのは、なんということのない日本の街角が持つ独自の風景の美しさです。日本の街角に潜む狸たちの存在をスパイスとしてあらためて眺めてみると、それがもたらす豊かな風景に心を奪われることでしょう。狸の持つユーモラスな風貌と、それを愛する日本人の独特な感性に思いを馳せながら、日常の風景を再発見していく。そんな藤林さんの視線と挑戦に心よりエールを送りつつ、私もこの展示を楽しみたいと思います」(展覧会ウェブサイトより)。
藤林彩名は1995年埼玉県生まれ。2017年に日本写真芸術専門学校フォトフィールドワークゼミを卒業。2021年、恵比寿でメンバー9名とともに自主ギャラリー・Koma galleryをオープン。Koma galleryをベースに年に3回ほど作品を発表している。
本展に際して、日本たぬき学会の村田哲郎は次のように述べている。
「『狸のいる風景』は、写真家・藤林彩名が日本全国を旅しながら撮影した狸たちを集めた、ほかに類を見ない魅力的な写真展です。そもそも『狸って、そんなに全国にいるの?』と疑問に思う方もいるかもしれませんが、その普及はじつに全国津々浦々に及んでいます。私は街角狸研究家として狸の置物の分布を調査し、実地調査やSNSを駆使してその広がりを追い求めています。その結果、全国各地、都道府県単位で言えば全47都道府県に狸の置物が広がっていることがわかりました。同じく置物の世界で招き猫の生産地として知られる愛知県常滑や、シーサーが広く知られている沖縄でも、狸の置物は確かに存在しているのです。
その狸の9割以上を生産しているのが滋賀県甲賀市信楽で、年間に約10万体もの狸が製作され、それが日本中に広まっています。この狸たちは民家の軒下や店舗の前など様々な場所に飾られているのですが、これほどまでに狸の置物が普及しているのは、世界中どこを探しても見あたらないユニークな日本文化の一環と言えるでしょう。
この写真展では、そんな狸の存在を藤林さんの独創的なフレーミングを通して鑑賞することができます。狸たちは日本の街角に馴染みすぎているために、我々がその存在に気付かないまま通り過ぎてしまうことが多いかもしれません。実際、実家に何十年も狸の置物があったにもかかわらず、最近まで(私と狸の話をするまで)気づかなかったというエピソードもあるほどです。それでも狸たちは、人々に福をもたらす縁起物として、健気に微笑みを浮かべ続けているのです。
藤林さんの写真を通してとくに感じられるのは、狸と風景の絶妙な調和と距離感です。狸が街角に自然に馴染んでいる様子は、日本に住む人々が特段意識をしない日常の風景とも言えます。藤林さんの写真は、狸と風景のどちらも同じくらいの重要性でとらえており、そのバランス感覚が彼女の独自性をきわだたせています。これは私のような狸研究家にはとてもできないことで、どうしても狸自体のフォルムや特徴に目を奪われてしまいがちです。しかし、少し距離をおいて風景全体を眺めてみることで、かえってこの場所に狸がいることの意味や、持ち主の方の思いにも心を巡らせることができるのです。
『狸のいる風景』は、日本中に広がる狸たちの存在を通じて、日本の文化や風景に対する新たな視点を提供してくれます。藤林さんの写真が教えてくれるのは、なんということのない日本の街角が持つ独自の風景の美しさです。日本の街角に潜む狸たちの存在をスパイスとしてあらためて眺めてみると、それがもたらす豊かな風景に心を奪われることでしょう。狸の持つユーモラスな風貌と、それを愛する日本人の独特な感性に思いを馳せながら、日常の風景を再発見していく。そんな藤林さんの視線と挑戦に心よりエールを送りつつ、私もこの展示を楽しみたいと思います」(展覧会ウェブサイトより)。