EXHIBITIONS

有村勇史「THROUGH SCOTOMA」

LAID BUG
2024.11.22 - 12.14

メインヴィジュアル

 LAID BUGで、有村勇史による個展「THROUGH SCOTOMA」が開催されている。

 有村勇史は、鹿児島県を拠点に活動する写真家で、日々のフィールドワークを通じて風景や物事をフィルムカメラで記録し続けている。静かに波立つ海や、木々が生い茂る山、野生動物や、忘れ去られた建築物など、多角的な視点で切り取られた作品群は、そこに存在した光とともに緻密にフレーミングされることで、有村の眼差しでとらえた被写体の本質を顕在化。2023年7月には、LAID BUGにて自身初となる個展を開催。2024年11月にはベルリンのHVW8 Galleryで開催されたグループ展「INTANGIBILITY」に参加した。

 本展では、「Scotoma(スコトーマ)」を主題に据えた作品群を発表。Scotomaとは、医学的には視覚の一部に見えなくなる部分が生じる「盲点」を指し、心理学的な文脈では、個人が思い込みや無意識のフィルターによって特定の情報や事実に気づかない状態を表す。

 有村は、写真を通して、視覚的に見えない部分や無意識の領域を探るアプローチを続けてきた。無意識の領域にあるものが表層に姿を表す瞬間を本能的にとらえるだけでなく、フィルムを現像し、そこに映し出されたものを客観的に見ることでも無意識を認識することができると有村は言う。

 日常に潜む美しい一瞬を切り取り、そこに漂うかすかな違和感や不確実性をも慈しみ、作品として昇華する有村独自の写真表現は、観者に新たな気づきを与え、忘れていた記憶を思い出すきっかけを与えてくれるだろう。