額田宣彦「往来」

　HAGIWARA PROJECTSで、額田宣彦による個展「往来」が開催されている。

　額田は1990年代より、多くの美術館やギャラリーの展覧会に参加し、作品を発表してきた。1990年代半ばにはジャングルジムのような格子を描くスタイルを確立し、現在は均一に下地を塗った麻布に、マスキングテープなどを使わず、フリーハンドで麻布の目に沿ってラインを描く手法に至っている。

　本展では、「布目に沿ってラインを描く」というプロセスから生まれた作品群から、「横線」「点」「斜平行線」「斜線」「三角形」「ジャングルジム」シリーズの作品が展示。これにより、前回の「斜線」シリーズとの違いや、新たなアプローチを提示する。

　制作プロセスにおいて一定の手順を守ることで、作家の恣意的な判断や相対的な評価を減らし、作家が言う「その絵画自体が根拠として、その絵画を成り立たせている絵画」を生み出している。そのシンプルで潔い緊張感と、淡々とした時間の痕跡が同時に存在する作品は、画面に描かれているものを読み取るという視点ではなく、私たちの選択や価値基準について問いかける自由を提供。この問いかけを通じて、人間の奥底にある普遍的な感性と知覚に訴えかけ、観者との豊かな対話を促すことを目指す。