EXHIBITIONS

河口龍夫「再考−HIROSHIMAのタンポポ」

2024.07.17 - 08.24

(左から) 関係ー植物・HIROSHIMAのタンポポ 1995、1995年のHIROSHIMAのタンポポ 2024 © Tatsuo Kawaguchi

 SNOW Contemporary で、河口龍夫による個展「再考−HIROSHIMAのタンポポ」が開催されている。

 河口龍夫は1940年兵庫県生まれ。エネルギー、時間、生命、宇宙など、様々な要素を主題に、それらの「関係」性をテーマに制作を行ってきた。その作品群は、植物や水、空気などの自然をベースにした素材に、鉛や鉄といった金属を組みあわせたり、制作過程に加熱や腐食を用いるなど、既存のメディアや表現形式にとらわれることなく、独自の表現方法で発表している。

 1960年代から作品の発表を始め、65年には神戸在住の作家らとグループ「位」を結成。「人間と物質」展(1970)や「第8回パリ・ビエンナーレ」(1973)、そしてポンピドウー・センターで開催された「大地の魔術師」展(1989)などに出品し、国際的に高い評価を受けている。1982年には「関係−種子」シリーズを開始。当初、河口は植物の種子を銅で覆う作品を制作していたが、1986年のチェルノブイリ原発事故後、銅に代わり放射線を遮る鉛を用いるようになった。チェルノブイリ原発事故と同年に河口は、「関係―種子」(1986)において170種以上の種を鉛で封印している。

 河口は1995年に広島市現代美術館で行われた「被爆50周年記念展 ヒロシマ以後 現代美術からのメッセージ」で展示された《関係―鉛の温室・HIROSHIMAのタンポポ》の制作の過程において、人間がつくった原子爆弾に被爆した猫や犬、野鳥や草花といった人間以外の生物に目を向けるようになった。そのメタファーとしてだれもが知っているタンポポを作品のモチーフとして選んでいる。《HIROSHIMAのタンポポ》は、戦後50年の時を生き抜いて生息していたタンポポを採集し、タンポポの大きさにあわせて鉛板を2枚矩形に切断し、綿毛になった種子を持ったタンポポをその2枚の鉛板のあいだに挟み込んで覆い保護するという発想で作品化した。

 本展では、上記作品と同時期に鉛で制作された《関係ー植物・HIROSHIMAのタンポポ》と、新作ドローイング《1995年のHIROSHIMAのタンポポ》など、約20点を展示。「HIROSHIMAのタンポポ」シリーズならびに現代美術作家・河口龍夫の現在地を見る機会となる。