物質への関心を根底に持ちながら、独自の哲学を背景に、関係や生命、時間といった目に見えないものや不確かなものを可視化した数々の作品を制作してきた河口龍夫。
1965年にグループ〈位〉の活動で注目を集めて以降、「東京ビエンナーレʼ70(第10回日本国際美術展) 人間と物質展」(東京都美術館、京都市美術館、愛知県美術館、福岡市文化会館、1970)、「大地の魔術師たち」展(フランス・ポンピドゥー・センター、1989)など数々の展覧会に出品。兵庫県立美術館、東京国立近代美術館をはじめ、国内でも大規模な個展を開催するなど、様々な場所で継続的に、意欲的な活動を続けている。
そんな日本を代表する作家である河口の最新個展「河口龍夫―ちのこうや―」が、富山県の黒部市美術館にて開催される。
本展は、情報過多な社会の中で人々がどのようにあるべきかという問題意識を起点に、作品を通して様々な情報を内包する広大な自然や大地に重ねることで、考察を試みるという内容。
本を用いて、情報や知性、叡智などについて思考する一連のシリーズの新作として、作品の構想として描かれたドローイング《知の荒野》をもとに、空間的・時間的に広がる「知」のフィールドを表現した大型インスタレーション作品を発表する。
また、黒部近郊をリサーチし、縄文時代の土器にまぎれた種子の空洞の痕跡から着想を得た作品《関係-縄文時代》も展示。加えて、河口が黒部や朝日町を含む地域の化石や石などを調査したことから、朝日町埋蔵文化財保存活用施設「まいぶん KAN」の展覧会にも数点が合わせて展示され、「ちのこうや」について相対的に理解を深められる。
そのほかにも、新作《DARK BOX 2018》の制作に立ち合うイベントも開催。真っ暗な闇の世界で闇の封印作業を体験したあと、プラネタリウムで光の世界に出合い、闇と光の世界を体験できるという貴重な機会だ。こちらもあわせてチェックしてほしい。