EXHIBITIONS

稲垣徳文 写真展「Blue Period」

2024.08.02 - 08.31
 ギャラリー冬青で、稲垣徳文の写真展「Blue Period」が開催される。

 稲垣は1970年東京都生まれ、法政大学社会学部卒業。在学中より宝田久人に師事し、朝日新聞社『AERA』嘱託カメラマンを経て現在はフリーとして活動している。おもな展覧会は、「『ROOTS』アジェとニエプスを巡る旅」(ギャラリーバウハウス、2020)、「『巡礼』2010〜2020」(富士フィルム イメージングプラザ 東京・大阪、2020)、「鶏卵紙のパリ」(ギャラリーソラリス、2021)など。

 稲垣は以下のステートメントを発表している。

「世界初の写真集といわれる『自然の鉛筆』の『植物の葉』を見つけたのは昨年の春のこと。探しはじめて2年あまりそれは自宅近くの街路樹の根元に生えていた。早速、枝葉のひとつを持ち帰りフォトジェニックドローイングを始めた。サイアノタイプのシンプルな青と白の造形。光の作用によりもののかたちが紙の上に定着される過程には期待感と驚きがある。180年前、アナ・アトキンスが海藻の標本をプリントして以来、基本的な作法は変わらない。白いシルエットに浮かぶ葉脈は幾何学模様のように美しい。

 この、サイアノタイプ独特のプルシアンブルーの青は日本語では紺青と表記される。絵画の染料として北斎や広重の浮世絵にももちいられたことからEdo Blueとも表現される。ゼラチンシルバープリントが発明される以前、サイアノタイプは19世紀におけるポピュラーな写真技法のひとつだった。鶏卵紙に比べるとコントラストが高く、卵白やゼラチンなどの塗布層を持たないため用紙のテクスチャーそのままにマットにプリントされる。

 あらためて大型カメラで撮影したパリの街並みやニセフォール・ニエプスのアトリエの風景をサイアノタイプにプリントした。英国南西部のレイコックを訪れたのはそれから三ヶ月後のこと。ヘンリー・フォックス・タルボットが残した『植物の葉』の子孫たちは村を流れるエイボン川沿いに茂っていた。『植物の葉』は白い小さな花を咲かせる。タルボットは比較的若い枝葉を選んでプリントしていたようだった」。