山本雄基「Duality」

　N projectで、山本雄基による個展「Duality」が開催されている。

　山本雄基は1981年北海道生まれ。2007年北海道教育大学大学院 教育学研究科教科教育専攻美術教育専修（西洋画）を修了した後、2012〜13年に札幌市の助成を受けベルリンに滞在。2017年からは naebono art studio を共同運営しながら、現在も札幌市を拠点に活動している。

　山本の作品は、綿布にジェッソを塗布した下地の上のわずか数ミリのなかに、透明のメディウムによる層と円形で構成される描画層を交互に集積させるシンプルかつ緻密なプロセスを経て制作。

　多層の集積によって完成される絵画表面は、下層の色彩の気配がありながら、上に重なるレイヤーの影響を受け、表面に近い色面ほど彩度が上がっている。透明な層という緩衝材を自在に操ることで、描画した実際の色彩のみならず、集積による効果がもたらす新たな色彩が観者の視覚に働きかけるという稀有な体験を観者に与えるだろう。

　本展は、作品制作における試行錯誤のなかで作家が発見した様々な二重性を考察しながら、山本雄基の現在地を照らす小品から大作までの新作16点を展示。