EXHIBITIONS

佐野魁、鈴木悠生、半田颯哉「Concrete Lives」

四谷駅前ビル 5F
2024.07.05 - 07.15

佐野魁 Still Life ? 木炭、パステル、コンクリート、木材 220 × 270 × 5 cm

半田颯哉 Framed Stratum(もみじ) 31.9 × 23.2 × 7.5 cm 電子ペーパー、コンクリート、塗装した木材、もみじの葉 2024

鈴木悠生 02-03 #003 (「TOKYO TRANSPARENT BOUNDARIES」シリーズより) 50.8 × 61.0cm(print size) 発色現像方式印画 2021

 四谷駅前ビルで、佐野魁、鈴木悠生、半田颯哉による展覧会「Concrete Lives」が開催されている。キュレーションは半田颯哉が担当。国際アートフェア「Tokyo Gendai」の第2回にあわせて開催される本展では、都市におけるメディウムとしてのコンクリートに焦点をあてる。

 コンクリートは現代の都市空間を支えるもっとも重要な素材のひとつであり、人新世と呼ばれる人間の時代の地層ができたならば、おそらくそれを形成するおもな物質のひとつともなると考えられる。そんなコンクリートに日本の建築家たちはその構造的な強度と美的な可能性を見出し、戦後日本の建築の象徴的な素材のひとつにもなっている。

 日本の地学的・歴史的な文脈において、コンクリートは瓦礫のイメージとも結びつく。関東大震災、阪神淡路大震災、東日本大震災、今年の初めに起きた能登半島地震。あるいは第二次世界大戦中の東京大空襲や、広島、長崎への原爆投下。度重なる震災と戦時中の記憶が、コンクリートという素材にたんに構造的な強さだけでなくそれが崩れた後のことを想起させ、その脆さを象徴させることもある。

 佐野魁は、自身の生活のなかの「具体的な(Concrete)」風景を、コンクリートの上に画面定着のしづらい木炭によって描く。コンクリートは私たちの生活を支える堅牢さと脆さの両方を象徴しており、木炭とコンクリートの組みあわせによって、私たちの日常生活は決していつまでも続く盤石なものではないことを示唆している。

 建築のバックグラウンドを持つ鈴木悠生は、建築や都市を独自の視点でフレームに収めている。「TOKYO TRANSPARENT BOUNDARIES」シリーズでは東京特別区のそれぞれの区境を訪れ、その見えない境界線を撮影。

 半田颯哉は、技術の進歩と社会的倫理の間に生じる摩擦に焦点をあてている。エンジニアの父のもと広島で育った半田は、幼い頃からテクノロジーに親しみつつも、同時にそれが人類にとっての危機を引き起こしうることも認識してきた。半田によるコンクリートのレリーフには、人類の創造物への肯定と、その営みによる環境破壊に対する批判のアンビバレントな感情が込められている。

 本展で提示されるのは、それぞれの視点によって切り抜かれた都市空間の風景だ。コンクリートというメディウムを通して、都市生活のその基盤や歴史にアクセスしていくことができる。