EXHIBITIONS

吉田克朗展 ―ものに、風景に、世界に触れる

2024.07.13 - 08.18, 2024.08.20 - 09.23

650ワットと60ワット 1970 コード、電球、鉄 埼玉県立近代美術館蔵
©️ The Estate of Katsuro Yoshida / Courtesy of Yumiko Chiba Associates

 埼玉県立近代美術館で「吉田克朗展 ―ものに、風景に、世界に触れる」が開催される。

 吉田克朗(1943〜1999)は「もの派」の中核作家であり、その後実験的な手法を通して絵画を探求した。1964年に多摩美術大学に進学し、斎藤義重のもとで指導を受け、同時代の海外の美術動向にも興味を持つようになる。1968年に卒業すると、同大学出身者らが関わっていた横浜市の共同アトリエで、関根伸夫、菅木志雄、小清水漸らと制作を行った。

 翌年の1969年から吉田は、物体を組みあわせ、その特性が自然に表出される作品を集中的に制作。このような作風を示す動向は後にもの派と称され、国際的に注目を浴びることになるが、吉田はその先鞭をつけた作家だった。また、物体をもちいた作品と並行して、自ら撮影した風景の写真を題材にした版画の制作も始める。

 1971年になるともの派の作風から離れ、赤い色彩や筆触といった絵画的な要素を取り入れた作品を発表。1970年代は版画の制作に加え、転写などの実験的な手法を試みながら絵画表現を模索する。1980年代前半には、風景や人体を抽象化して描く「かげろう」のシリーズを手がけ、その後、粉末黒鉛を手指で擦りつけ有機的な形象を描く「触」のシリーズを精力的に制作した。

 55歳での早すぎる死を迎える直前まで、時代とともに変貌する美術動向のなかで、あるべき制作を追い求めた。本展では、記録写真や未公開の資料を交え、もの派を代表する初期作品から、1990年代後半の絵画の大作までをふり返り、吉田克朗の制作の軌跡をたどる。