EXHIBITIONS

松下真理子 人間動物

2024.05.11 - 07.07

松下真理子 屠畜場からの眺め 油彩、キャンバス 2024

 原爆の図 丸木美術館で、松下真理子による個展「人間動物」が開催される。

 松下は1980年大阪府吹田生まれ。松下はこれまで、生きる痛みや性愛、「人間とはどのようなものか」を追いかけつづけ、絵画をはじめとする様々な表現で作品を制作している。幼少の頃、性的暴力からの治癒と理解のために書きはじめた無数の詩が最初の表現となった。その後、精神的な模索と言葉によらない方法を求め、芸術を志す。2004年に京都市立芸術大学美術学部油画専攻を卒業。

 工場での労働の傍ら独自の絵画表現を再開し、16年《Margarita7》をはじめとする作品群で、第2回CAFFA賞(CAF・アーティスト・アワード)グランプリを受賞し、翌年には、ロンドンにてデルフィナ財団のレジデンスに滞在し、インド、ペルー、韓国、サウジアラビアなどの女性芸術家たちと親交を結ぶ。のちにアウシュヴィッツ、フィリピンの「赤い家」などを訪れ、絵画を制作。20年、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチに影響を受けた「愛の飾らぬ言葉において」、21年J.M.クッツェーの著書から名付けた《Friday》を含む「人間の声」を発表した。

 本展では、「人間と呼ばれているもの」と「動物と呼ばれているもの」を隔てない、新たな思想的深淵に踏みこんだ作品群を発表。新作の絵画、古いシーツによる大型のインスタレーション、ドローイング、旅のノートなどを初公開する。また松下は、ガザへの空爆が開始される直前までパレスチナに滞在していたことから、この事態に呼応した表現者のひとりと言える。本展を通して、松下が描く「檻のむこうの色」を鑑賞することができる。