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『君たちはどう生きるか』は、なぜ「死の島」をモチーフにしたのか

宮﨑駿監督による最新作『君たちはどう生きるか』。この話題作を、『シン・エヴァンゲリオン論』(河出書房新社)などで知られる批評家・藤田直哉がアルノルト・ベックリンの《死の島》を参照しながら読み解く。

文=藤田直哉

『君たちはどう生きるか』ポスタービジュアル ©︎2023 Studio Ghibli

「死の島」をなぜモチーフにしたのか

 『君たちはどう生きるか』のクライマックスのひとつである「お墓」のシーンは、19世紀に活躍したスイス出身の画家、アルノルト・ベックリンの《死の島》をモチーフにしていると解釈されている。《死の島》は、前作『風立ちぬ』において、そのものとして作中に登場している(軽井沢の建物の中に飾られている)。

 《死の島》というタイトルの絵をベックリンは五枚描いたが、そのうちの三枚目は、アドルフ・ヒトラーが入手し、執務室に飾っていたと言われる。つまり、ファシズムや戦争を強く連想させる絵画である。

 宮﨑駿は、なぜこの絵を作品に登場させたり、自作の重要な箇所のモチーフに使ったのだろうか?

 その答えのひとつは、『君たちはどう生きるか』および前作『風立ちぬ』は、これから先、暗い戦争と破局の時代、軍国主義の時代に入るという確信のもと、その時代を「どう生きるか」を教えるために作られた作品だ、ということである。

アルノルト・ベックリン 死の島 1880 メトロポリタン美術館蔵

破局に向かって突き進んでいく時代をどう生きるか

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