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ブランクーシ大回顧展がポンピドゥー・センターで開幕。生の躍動と同時代の多様な文化人との交流を伝える

20世紀初頭の西洋で近代彫刻の概念を変えたコンスタンティン・ブランクーシ(1876〜1957)。その大回顧展がパリのポンピドゥー・センターで開幕した。同館所蔵作品に加え、世界の主要美術館から集まった120点もの彫刻作品、ドローイングや写真、パリのアトリエ再現とそこで制作する本人や彼を訪れた文化人らが映るヴィデオも見られる。生き生きとした展示の様子を現地からリポートする。

文=飯田真実

展示風景から、「空間の鳥」シリーズ© Centre Pompidou, Photo by Audrey Laurans

ブランクーシとパリ

 ブランクーシがパリに着いたのは1904年、彼が28歳のときだった。故郷ルーマニアで2つの美術学校を卒業しているが、さらにエコール・デ・ボザールで腕を磨くためだった。アントナン・メルシエに師事し、サロンに出展。そこでロダンに見染められ助手となるが1ヶ月ほどで独立すると、1907年から08年にかけて、《祈り》や《大地の知恵》を制作した。前者はロダンの影響を受けたブロンズ鋳造だが、モデルをできる限り簡素かつ印象的なかたちに落としこんだ。後者ではモデリングを放棄し石材を直彫りすることを選びながら、やはり個別的な要素を取り除き主題が示す普遍的な形態をめざした。

 芸術の都に集まる様々な美術作品にもふれながら、同時代のアーティストや文化人との出会いを重ねていく。ルーヴル美術館やギメ美術館の古代コレクションや非ヨーロッパの芸術(とくにキクラデス文明やアジア・アフリカ美術など)、ゴーギャンのタヒチを題材とした作品群、ドランによるキュビスムなども参照し、モディリアーニ、レジェ、ルソーなどと交友を持つ。

展示風景から、手前が《祈り》(1907)
葬儀用記念碑として祈りを捧げる女性像を依頼され、腕の一部が無い裸像をつくった。女性像を独自に様式化していく過程で後方に見える《王妃X》(1915-16)とのシルエットの類似も指摘できる
撮影=筆者
展示風景から、左がゴーギャンの《オヴィリ》(1894)、右がブランクーシの《大地の知恵》(1907-08)
ブランクーシは1906年のサロン・ドートンヌで開催されたゴーギャンの回顧展を訪れ、そこに出展されていたタヒチに伝わる神を題材としたと見られる像から、ポーズやアルカイックな様式を変更し《大地の知恵》をつくったと考えられている
撮影=筆者

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