EXHIBITIONS

ペトラ・ノードカンプ「BETTER NOT MOVE」

2024.03.16 - 04.14

メインビジュアル

 CAVE-AYUMIGALLERYで、ペトラ・ノードカンプによる個展「BETTER NOT MOVE」が開催されている。

 ノードカンプは写真を学び、その作品はしばしば映像の領域をしなやかに行き来し、建造物や都市環境についての認識に、人々の経験や記憶、夢までもがどのように影響を及ぼしているのかを探求する。それらは静かに語りかけ、彼女の物語を反映し、離れがたく惹きつけてきた。

「BETTER NOT MOVE」は、写真、映像、書籍から成るプロジェクト。2020年、ノードカンプはアーティスト・イン・レジデンスとして来日。ノードカンプは瞑想的な空間や塀で囲まれた庭に興味を持ってきたが、同時に地震への恐怖と直面した。災害がいつ起こるかという不安は、愛する人を数か月前亡くした時に現実となっていた。日本滞在中、喪と悲しみが恐怖と混ざり合い、忘れまいとする意思と、進み続けようとする意思が葛藤した。

 ノードカンプが滞在した小さな日本の家は、地震への恐怖とパートナーの喪失に対する悲しみに満ちた場所だったが、そのいっぽうで彼女は観察することで安らぎを見出した。石の構造、根付いた木の根、柔らかな苔、窓枠の線などが鋭いフレーミングで捉えられ、深い眼差しで表現される。その美しさはイメージに必然的にしがみつくようでもあり、美しさを求めることが、恐怖や悲しみを克服するために必要不可欠だと問いかけるようだ。

 本展での「BETTER NOT MOVE」は私的で親密なインスタレーションとして、静寂と瞑想の場となる。