EXHIBITIONS

グォリャン・タン「in mid shapes」

2023.10.28 - 12.16
 オオタファインアーツ東京で、グォリャン・タンによる日本初個展「in mid shapes」が開催されている。

 タンは1980 年シンガポール生まれ、同国在住。絵画の概念を探究し「ペインター」と「ペインティング」という直接的な関係性を見直すことで制作を発展させる。2015 年より続くタンの代表的な平面シリーズでは、模型飛行機に使われる半透明の布を支持体にし、水で薄めたアクリル絵の具を撥水性のあるこの支持体の上に重ねることによって、淡く透明感のある抽象画を制作している。これは従来のペインティングが持つ「筆によって跡を残す」という手法とは異なり、水平に置かれた支持体の四辺から注がれるアクリル絵の具が、時間をかけて布に定着することでできる色の滲みやしみによって、作品の表面がつくり出されていく。

 絵画表現において支持体に対して非直接的でありたいというタンの姿勢は、幾何学的なパターンを特徴とする新たなシリーズへと発展する。本展で発表する《Blueshift》では、形状記憶の性質を利用して一度折り目や皺を作った布を張り伸ばし、その上に顔料を重ねたり沈殿させたりすることで、布につけた痕跡を色によって再び浮かび上がらせている。テクスチャーや残痕によって強調された色面は、制作の過程でできたイメージを具現化しているように見え、支持体そのものが持つ記憶を可視化しているとも言える。

「私は、洗濯、折り紙、儀式など、たたむというジェスチャーから連想されるさまざまな日常に惹かれています。これらの行為は、私たちの注意をゆっくりとした時間の感覚に向けさせるものであり、それは絵画にもできることです」とタンは言う。タンの興味は、如何に絵画が私たちの時間や身体、記憶に関する感覚を形作り、また導いていくのかという問いに根ざしている。

 日本における初の個展となる本展では、7点の新作ペインティングのほか、立体作品2点を展示する。