片岡メリヤス「eyes」

　VOILLDでは、片岡メリヤスによる個展「eyes」が開催されている。

　片岡はファブリックを用いたぬいぐるみ作品を中心に、おもちゃや木、機械や陶器など、様々な素材をかけ合わせ多彩な表現で作品を制作している。ぬいぐるみだけにとどまらず、作品と自らによって演出される人形劇の開催や、ドローイング、彫刻作品の制作や、異ジャンルのアーティストとのコラボレーションも行い、国内にとどまらず韓国、台湾などでも展示を行うなど、精力的に活動の幅を広げている。

　片岡がつくり上げる、ふわふわとして柔らかで、優しくかわいらしい表情をもった作品群は、一つひとつが個性的なキャラクターを持っており、まるで生きているような生命力やぬくもりと、それぞれに強い意志を感じさせる。子供の頃に夢中になっていた遊びや夢を描く楽しさが、片岡により命が吹き込まれた作品によって懐かしい感覚として呼び起こされる。その作品群は「ぬいぐるみ」という概念を超えて、世代とともに変化していってしまう、自分自身への興味の対象や、物への愛着に対する想いに訴えかけてくるとともに、忘れていた感情や大切にしていた時間に、改めて目を向ける機会を与えてくれる。

　本展では、作品それぞれの「目」に焦点を当て作品の制作を行ったという。数年前に、膨大な数のデットストックのぬいぐるみのパーツを譲り受けた事をきっかけに、その目のパーツからインスピレーションを受け作品を制作しはじめたという。いつもとは違う制作スタイルは研究のようだったり、制作された作品たちも予期せぬ個性が生まれたりと、思いがけないものができてしまう偶然の価値を楽しむという、新たな視点を持てたと片岡は言う。

　カオスさえも感じさせるその作品群は、偶然から生まれた必然的な片岡の側面であり、それぞれのなかに存在する生きた多様な側面を受け入れる眼差しを持つことの大切さを私たちに訴えかける。