EXHIBITIONS

美術と風土 アーティストが触れた伊那谷展

林繭子 伊那谷−㈼

 碧南市藤井達吉現代美術館で 「美術と風土 アーティストが触れた伊那谷展」が開催されている。

 伊那谷(いなだに)とは、南アルプスと中央アルプスに囲まれた長野県南信地方の一部を指す言葉で、北の諏訪湖から出た水が周囲の山々から出てくる水流を合流させて流れる天竜川が南下し、その南端は天竜峡と呼ばれる険しい渓谷によって囲まれた地域が中心を成している。

 そこは、万葉集をはじめ歌に詠まれた地であり、源氏物語には園原の帚木(ははきぎ)が巻名になっていたり、明治には文人画家・富岡鉄斎が2度にわたって近くの遺跡を訪ねたという記録があるほか、飯田は近代日本画の礎を築いた菱田春草の生誕地でもある。

 本展に向けて、近畿・東海そして伊那谷などを中心に活躍する20名の造形作家が訪れ、地域が持つ特有の気候や地勢などの風土や生活、歴史や文化に触れてきた。会場では、そこから得たインスピレーションを手掛かりに制作された作品を中心に展示されている。