マルク・シャガール 版にしるした光の詩

　世田谷美術館で「マルク・シャガール 版にしるした光の詩 神奈川県立近代美術館コレクションから」が開催されている。

　マルク・シャガール（1887〜1985）は宙を舞う恋人たちや花束、動物などを幻想的で色彩豊かに描く「愛の画家」として知られ、20世紀を代表するアーティストのひとりとなった。帝政ロシア領のヴィテブスクにユダヤ人として生まれ、戦禍や革命に翻弄されながらモスクワやベルリン、そしてパリやニューヨークへと活動の地を移した。異邦人画家としての境遇もあり、シャガールは郷愁を感じさせる独自の作風を確立していく。

　シャガールは絵画のかたわら版画制作にも熱心に取り組み、2000点以上の作品を手がけた。その創作活動は版画史の観点から見ても重要な足跡であり、版元や工房との協働によって生み出された版画作品には、絵画に通ずる部分はありながらも、また違った表現と味わいが刻まれている。

　本展では神奈川県立近代美術館の望月コレクションより、さまざまな年代・技法による6つの版画集から厳選した作品約140点を紹介する。技法ごとの表現の違いや、題材や制作の背景などに注目した展覧会となっている。