EXHIBITIONS
ミヤギフトシ「American Boyfriend: Banners」
Yutaka Kikutake Galleryでは、ミヤギフトシによる「American Boyfriend: Banners」展が開催。本展は、void+での個展(9月27日~10月29日)との同時期開催となる。
ミヤギは1981年沖縄県生まれ。2005年ニューヨーク市立大学卒業。現在はセレクトブックショップのユトレヒト(東京)にスタッフとして携わるほか、アーティストコレクティブ・XYZ collectiveの共同ディレクターも務めており、そこでの活動やインスピレーションは作家としてのアイデンティティの一翼を担っているという。
今回、会場のひとつとなるYutaka Kikutake Galleryでは、作家がたびたびモチーフとして扱ってきた「banner(旗)」に刺繍でテキストが綴られる作品のほか、写真と映像作品からなる「American Boyfriend」の新作を発表する。
12年から継続している作家のライフワークともいえる同名プロジェクトは、作家自身の個人史と歴史が混ざり合うように「ブログ」に綴るテキストを基盤に、写真や映像、小説、立体、ときにはパフォーマンスなど様々な形態で発表を続けてきた。
最初の発表から10年を迎えるこのプロジェクトは、「沖縄人男性とアメリカ人男性が、沖縄という土地で恋に落ちることは可能か」というテーマから始まり、あらゆる時代の文学、映画、音楽を参照・引用しながら、戦争やその時代における社会規範など歴史が持つ不自由さのもとに描かれる登場人物たちの、親密な関係性がいくつもの断片的な物語を紡いできた。そこでは、生まれ育った沖縄で作家がセクシュアルマイノリティとして感じてきた自身と社会との様々な断絶や、戦後の日本とアメリカ、そして、そのあいだに位置する沖縄の歴史が並行して語られている。
本展で発表される新作は、19年の作品《In a Well-Lit Room: Dialogue between Two Characters》の続編に位置するもの。「banner(旗)」に刺繍で綴られるテキストが、写真や映像作品から伝わる語りと呼応し、「存在した/するかもしれない」登場人物らの関係性が浮かび上がる。
映像に登場する2人の男性の会話は、いつしか様々な人の記憶を織り交ぜながら、沖縄の歴史に潜む「あったかもしれない日常」の断片をなだらかに現代へとつないでいく。2人の会話の内容はコロナ禍以降の交流とされ、「American Boyfriend」プロジェクトを通して作家が語ってきたことや、写真シリーズ「感光」(2011〜)などこれまで発表してきた作品にもふれながら、物語に新たな展開が加わっている。
「…歴史を辿り、埋もれた小さな声たちに耳を澄まさなければならない」とも語るミヤギ。その活動は、自身の文学的感性を通じ、表向きに語られる歴史とその裏側に必ずある日常に想像をめぐらせながら、いまもなお続く沖縄の社会的・政治的抑圧に抗うささやかな希望を提示し、「隔たり」を介した越境・帰郷への普遍的かつ複雑な憧れとそこに存在し得る豊かな関係性を示唆している。
ミヤギは1981年沖縄県生まれ。2005年ニューヨーク市立大学卒業。現在はセレクトブックショップのユトレヒト(東京)にスタッフとして携わるほか、アーティストコレクティブ・XYZ collectiveの共同ディレクターも務めており、そこでの活動やインスピレーションは作家としてのアイデンティティの一翼を担っているという。
今回、会場のひとつとなるYutaka Kikutake Galleryでは、作家がたびたびモチーフとして扱ってきた「banner(旗)」に刺繍でテキストが綴られる作品のほか、写真と映像作品からなる「American Boyfriend」の新作を発表する。
12年から継続している作家のライフワークともいえる同名プロジェクトは、作家自身の個人史と歴史が混ざり合うように「ブログ」に綴るテキストを基盤に、写真や映像、小説、立体、ときにはパフォーマンスなど様々な形態で発表を続けてきた。
最初の発表から10年を迎えるこのプロジェクトは、「沖縄人男性とアメリカ人男性が、沖縄という土地で恋に落ちることは可能か」というテーマから始まり、あらゆる時代の文学、映画、音楽を参照・引用しながら、戦争やその時代における社会規範など歴史が持つ不自由さのもとに描かれる登場人物たちの、親密な関係性がいくつもの断片的な物語を紡いできた。そこでは、生まれ育った沖縄で作家がセクシュアルマイノリティとして感じてきた自身と社会との様々な断絶や、戦後の日本とアメリカ、そして、そのあいだに位置する沖縄の歴史が並行して語られている。
本展で発表される新作は、19年の作品《In a Well-Lit Room: Dialogue between Two Characters》の続編に位置するもの。「banner(旗)」に刺繍で綴られるテキストが、写真や映像作品から伝わる語りと呼応し、「存在した/するかもしれない」登場人物らの関係性が浮かび上がる。
映像に登場する2人の男性の会話は、いつしか様々な人の記憶を織り交ぜながら、沖縄の歴史に潜む「あったかもしれない日常」の断片をなだらかに現代へとつないでいく。2人の会話の内容はコロナ禍以降の交流とされ、「American Boyfriend」プロジェクトを通して作家が語ってきたことや、写真シリーズ「感光」(2011〜)などこれまで発表してきた作品にもふれながら、物語に新たな展開が加わっている。
「…歴史を辿り、埋もれた小さな声たちに耳を澄まさなければならない」とも語るミヤギ。その活動は、自身の文学的感性を通じ、表向きに語られる歴史とその裏側に必ずある日常に想像をめぐらせながら、いまもなお続く沖縄の社会的・政治的抑圧に抗うささやかな希望を提示し、「隔たり」を介した越境・帰郷への普遍的かつ複雑な憧れとそこに存在し得る豊かな関係性を示唆している。