正延正俊(1911〜95)は高知県生まれの画家。吉原治良を中心に結成された「具体美術協会」の会員として活動した。
本展は作品集『MASATOSHI MASANOBU』(刊行:Axel Vervoordt Gallery、ベルギー)の出版を記念したもの。アートコートギャラリーにおいて正延の50〜70年代の作品を紹介するとともに、本作品集収録の論考を日本語訳した冊子を刊行、その活動を概観する。
正延は戦前より作家活動を始め、54年の「具体」結成に参加。グタイピナコテカでの個展などで精力的に活動し、72年の「具体」解散後も作品発表を続けた。パフォーマンスや新たな素材を取り入れた絵画表現によって知られる「具体」の中で、正延は絵画に内在する問題を扱い、油彩画の基本に則った技法で制作を続けるなど、独自の立ち位置で活動していた。
その絵画表現は、風景画や静物画が制作の中心であった1940年代から、50年代初めの幾何学形態に分解し再構成された抽象的表現を経て、50年代半ばにかけて豊かなマチエールと量塊性に富んだ画面へと変化。さらに「具体」の活動を通じて自身の絵画を確立し、50年代後半から60年代にはタッチやストロークを集積させた表現に発展していった。
本展では、50年代はじめの構成的な抽象画と人体を模した塑像を描いた作品から、グタイピナコテカでの個展出品作、70年代の「具体」解散後の作品まで紹介。「具体」の解散前後にまたがる30年間の変遷をたどる。