村上三郎(1925〜1996)は、1950年代に白髪一雄、田中敦子らとともに「具体美術協会」の中核メンバーとして活躍。木枠に張ったクラフト紙を体で突き破って通り抜ける「紙破り」などで知られる。
村上の代名詞とも言えるこの「紙破り」は、しばしばパフォーマンス・アートの先駆として、また、絵画の本質と新たな可能性を追求する試みとして位置づけられてきた。しかし、村上自身にとってそれは、物質と自らの身体・精神の衝突を通して「生」の実感に向き合おうとする私的で根源的な欲求にもとづく表現行為でもあったという。
本展では、この「紙破り」について、国内に唯一現存するその痕跡である《入口》(1955/2003)や、80〜90年代に行われたパフォーマンスの映像、そして、第2回具体美術展で写真家の大辻清司によってとらえられた《通過》(1956)の連続写真といった多角的な展示を通し、再考する。
さらに、立体作品《空気》(1956/1994)や、塗料を盛ったキャンバスを下向きにしたまま一晩放置することで生み出された《作品》(1957)などの絵画作品もあわせて展示。村上が実践した身体的行為と描くこと、そしてコンセプチュアルな表現の関係性について改めて考える。