江戸時代を代表する浮世絵師として、日本国内のみならず海外でも広い人気を誇る葛飾北斎。その作品が西洋の美術家たちに影響を与えたことは広く知られている。しかし、具体的にどの作品が、誰のどの作品へと影響を与えているのかまでを知る機会は多くはないだろう。
10月21日より国立西洋美術館で始まる「北斎とジャポニスム」展は、北斎作品と西洋の美術家たちによる作品との実質的な繋がりを、実際に同じ空間に並べることによって示すものだ。
展示構成は「北斎の浸透」「北斎と人物」「北斎と動物」「北斎と植物」「北斎と風景」、そして「波と富士」までの6章。出品点数は西洋絵画が220点、北斎の錦絵・摺絵が41点、版本が38点となっている。
今回の展覧会について、本展を監修した国立西洋美術館館長・馬渕明子は、29年前に同館で行われた「ジャポニスム展」がきっかけになったと話す。
「その展覧会はオルセー美術館の開館記念展のひとつとして共同で開催されたもので、日本の美術館の歴史の中でも画期的な試みでした。そのとき、ジャポニスムについてフランス人学芸員に叩き込まれた。それが私の個人的な研究分野として取り組むきっかけにもなりました。その後、いくつかのジャポニスム展を企画しましたが、いつも出てくるのが北斎。彼は(西洋から)どういう風に見られていたのかずっと気になっていた」と本展開催に至る経緯を語った。
人物や植物、動物、風景そして春画まで、北斎の作品とモネやドガ、クリムトをはじめとする巨匠たちの作品を並べて展示する本展。北斎が具体的にどのように西洋の作家たちに影響を与えたのか、あるいは引用されたのかを、明快な展示構成で概観することができる。