東京・神田錦町の旧カプセルホテルを舞台に、新たなアートイベント「Tokyo Jazz Club」が開催されている。会期は11月8日まで。
会場となるのは、神保町からほど近い旧「ナインアワーズ大手町」。かつて宿泊客がそれぞれのカプセルで眠り、休息を取っていた8階建ての建物が、現代美術、音楽、パフォーマンス、食、そして人々の交流が交差する文化空間へと生まれ変わる。
本イベントを立ち上げたのは、2022年にスイスで始まった「Basel Social Club」の共同創設者のふたりであるロビー・オクダ・フィッツパトリックとヤエル・サロモノウィッツ。アートウィーク東京との連携のもと、日本のジャズ文化や東京のアートシーンから着想を得た、独立したプロジェクトとして構想された。10月30日に行われたメディアプレビューでは、ふたりによる案内のもと、開幕に向けて準備が進む会場の一部が公開された。

個人のための空間を、人々が集う場所へ
Tokyo Jazz Clubの大きな特徴は、建物そのものをひとつの展示空間として活用していることだ。かつての宿泊カプセルやラウンジ、ロッカールーム、シャワーブースなどが、それぞれ異なる作品や体験の場へと転用されている。
メディアプレビューでロビーは、もともと均質な構造を持っていた各階を、あえてまったく異なる空間として構成したと説明。来場者が建物を上下に移動することで、異なる感情や体験の層を通り抜けていくような構成を目指したという。また、かつては個人の休息のために使われていた場所を、人々が集まり交流する場として再生することも、本プロジェクトの重要な考え方だ。
1階では、GILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAEによる大型インスタレーションと、中屋敷智生による壁面いっぱいのミューラルが来場者を迎える。2階は、カプセルホテルという建物の特徴がもっとも直接的に作品と結びつくフロアだ。かつての宿泊カプセルの内部に作品が設置され、来場者は小さな空間をひとつずつ覗き込みながら鑑賞する。

村本剛毅の《Imagraph》(2021-26)は、来場者がカプセルのなかに入り、横になって目を閉じることで、光を用いた視覚体験が生まれる作品だ。眠るためにつくられた場所が、知覚を刺激する作品の一部となるのだ。
いっぽう、マウリツィオ・カテランの作品は、注意深く探さなければ見つけられないほど小さなものとなっている。巨大な展示空間で作品と向き合う通常の鑑賞方法とは異なり、ここでは身体を屈めたり、狭い空間を覗いたりする行為そのものが鑑賞体験に組み込まれる。
ジャズ喫茶から着想を得たリスニングラウンジ
3階に広がるのは、日本のジャズ喫茶文化から着想を得た「ヴァイナル&ウイスキー・リスニングラウンジ」だ。
レコードを聴くためのブースが設けられ、来場者は床に腰を下ろし、ウイスキーを楽しみながら音楽に耳を傾けることができる。会期中はVDS(Vinyl Delivery Service)がセレクトするレコードが流れ、日によって異なる音楽との出会いが生まれる。ロビーによれば、このフロアはTokyo Jazz Clubにおける最初の本格的な社交空間であり、プロジェクトの名称にもつながる重要な場所だという。

また、レコードや音響機器、家具、アート作品が共存する空間には、オーディオテクニカやカリモク家具など、様々な分野の協力者が関わっている。展示されるのは、田名網敬一と赤塚不二夫に関連する版画、書籍、レコード、タロットカードなど。ガブリエル・オロスコや石川九楊らの作品を紹介する個展形式の展示も設けられる。
続く4階は、館内の賑わいから離れて作品と向き合う「静寂のフロア」。リヴァーネ・ノイエンシュワンダーや川端健太郎らの作品が並び、前後のフロアとは異なる鑑賞体験を生み出す。

5階では映像表現に焦点が当てられ、アーサー・ジャファによる映像作品を展示。また、かつてのロッカールームでは、パリを拠点とするItem Idemが、バーバラ・クルーガーやオノ・ヨーコらの限定エディション作品を紹介する。

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