1980年代、自身のキャリアに対して停滞感を感じていた柚木は、それ以降約20年にわたって、絵やガラス絵、版画、絵本の挿絵、装幀、立体造形など様々な作品を制作。自身の創作における可能性をさらに広げていった。


柚木と言えば染色の平面作品のイメージがあるかもしれないが、意外にもその技法を用いて立体作品を制作していたことには驚かされた。例えば、児童劇作家・村山亜土(1925〜2002)の未発表原稿をもとに柚木が挿絵を描いて絵本『トコとグーグーとキキ』を刊行した際には、出版記念イベントとして村山夫妻が創設したギャラリーにて個展を開催。その際に制作されたインスタレーションは、柚木の創作活動における新たな境地とも言えるだろう。2章「ワクワクしなくちゃ、つまらない」では、歳を重ねてなお新たな可能性を模索する柚木の意欲的な作品を鑑賞できる。


同展が巡回した岩手、岡山、島根、静岡は、柚木の制作活動とゆかりある土地だ。3章「旅の歓び」では、「柚木を巡る旅」をテーマに、地域ごとの特色や魅力を反映した作品群やその関連資料を紹介している。柚木が青春を過ごした長野、初めて民藝に出会った岡山、憧れの宮澤賢治の故郷・岩手など、日本各地から海外に至るまでの手仕事が紹介されており、柚木がその土地で見た風景や人々の営みが作品に落とし込まれていることも感じ取れるだろう。






















