• HOME
  • MAGAZINE
  • NEWS
  • REPORT
  • 「柚木沙弥郎 永遠のいま」(東京オペラシティ アートギャラリー…

「柚木沙弥郎 永遠のいま」(東京オペラシティ アートギャラリー)開幕レポート。75年にわたる柚木の創作活動の軌跡をたどる【3/3ページ】

 4章では、主に2000年代以降の作品が天井高のある空間に大迫力で展示されている。1950年代から商業デザインの仕事を数多く手がけてきた柚木であったが、2014年に開催されたIDÉEの展覧会に際して新たな作品を制作し、生活を豊かにする空間づくりに楽しみを見出したという。以降、様々な企業とのコラボレーション作品を展開したことがうかがえる作品も並ぶ。

 そして、「今日も明日は昨日になる」という章タイトルが示すように、「いまを大切に生きること」を掲げていた柚木。2011年の東日本大震災以降は、そのメッセージを作品に強く込めていることも読み取ることができるだろう。

4章「今日も明日は昨日になる」展示風景より
4章「今日も明日は昨日になる」展示風景より、「DEAN & DELUCA」カフェのための作品原画(2021)。色紙を用いたコラージュで、柚木の作風を受け継ぎつつ、現代的な色彩やモチーフが用いられている点も興味深い
4章「今日も明日は昨日になる」展示風景より、左から《いのちの樹》(2018)、《木もれ陽》(2019)、型染布《ツバメのうた》(2017)

 時代や暮らしの変化に寄り添いながらも、ものの本質を見極め、いのちへの温かなまなざしを注ぐ。そんな柚木の精神が、すべての作品の根底には流れている。手仕事ならではの揺らぎや力強い色彩は、モチーフに躍動感を与え、どの作品にも明るさと豊かさが息づいているのも大きな魅力と言えるだろう。ぜひ、そのエネルギーに満ちた展示空間のなかで、75年にわたる創作活動のなかで貫かれてきた柚木の信念を目の当たりにしてほしい。

4章「今日も明日は昨日になる」展示風景より、柚木が亡くなる2ヶ月ほど前に制作したコラージュ作品7点
柚木沙弥郎

 なお、同時開催される「Project N」は第100回を迎える。今回は、大小の点の集積による抽象絵画を手がける作家・富田正宣の作品を紹介。こちらもあわせてご覧いただきたい。

展示風景より、富田正宣《屈曲》(2025)

編集部