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大阪・関西万博、そして「静けさの森」を未来へ。藤本壮介、宮田裕章、SANAAが考える都市の未来【3/3ページ】

「Better Co-Being」に見る未来の都市のあり方

大屋根リングと森万里子《Cycloid Ⅲ》(2015)

 SANAAが設計したパビリオン「Better Co-Being」には、どのような未来の都市づくりのためのヒントが隠されているのだろうか。西沢は同パビリオンにおいては「静謐さ」を意識したと語る。「アジアの都市の魅力のひとつに、静謐さがあると思います。例えばインドの都市は、濁流のような騒音にあふれていますが、しかしそれがひとつの大きな流れになっていて、どこか静けさがあります。日本もそうですね、日本の都市のひとつの特徴が静寂なのだと思います。これだけの人やものが溢れているのに、どこか静かです」。加えて西沢は磯崎新の「間」(パリ装飾美術館から始まり、ヨーロッパを巡回した磯崎の個展が「間-日本の時空間」であった)を引きながら、ヨーロッパでは余計なものとしてとらえられる「間」の感覚が、東洋的な価値観においては肯定されるのではないかとも語った。

 SANAAは「Better Co-Being」での経験を踏まえて、今後はどのようなチャレンジをしていくのだろうか。この問いについて、西沢はかつて未来の建築のあり方を原広司に尋ねたときに出てきた2つのキーワードが参考になるのではないかと語った。それは「工業物としては割り切れない生命的建築」と「気候の変化を告げるような気象台としての建築」だったという。また、妹島は今回のパビリオンで、地面から浮かぶような浮遊感のある建築にチャレンジできたと語った。これが、今後自分たちがやろうとしていることにつながっていく予感がするのだという。

大阪・関西万博の「Better Co-Being」

 最後に、未来の都市について必要なことについて3人それぞれが意見を述べた。藤本は「現代の都市は同じモジュールの繰り返しになるという原則から逃れられないが、違うもの同士がありえなくらい隣接する場が未来の都市なのではないか」と語った。

 西沢は次のように述べた。「街に熊が出てくるニュースを見ても思うが、人間は本来自然のなかで生き残るために街をつくっていたことがわかる。街が自分たちの生命の延長であることを、より意識する時代になるのではないか」。

 そして妹島は「いま時代の節目であり、大きな変化が始まる予感がある。だからこそ、これまでの歴史の蓄積を踏まえたうえで、街に多くの人々が関わっていく仕組みが必要なのではないか」とまとめた。