進化したJW ANDERSON。新たなロンドン旗艦店は現代の「驚異の部屋」?【4/4ページ】

 食品もコレクションの一部となっている。ノーフォーク州に位置するマナーハウス、ホートン・ホール・エステートで採取された生産数限定の貴重なハチミツ、サンダーソンのコーヒー好きにあやかってブレンドされたロンドンのティーハウス、ポストカード・ティーのユニークなコーヒーフレーバーの紅茶などだ。

棚の上に並ぶ、ホートン・ホール・エステート産のハチミツ 撮影=筆者
コーヒーフレーバーの紅茶 courtesy of JW Anderson

 これらのキュレーションにあたってアンダーソンを導いているのは、驚くほど率直な「自分が好きなもの、そばに置きたいと思うもの」という信念だという。ファッション、デザイン、手工芸品をこよなく愛し、現代はディオールのクリエーティブ・ディレクターを務めるアンダーソンの美意識を強く感じさせるそれらの品々は興味深く、見ていて決して飽くことはない。

  新たな幕開けとなった今シーズンのルックブックには、同ブランドの服を身につけたアンダーソンの親しい仲間たちやコラボレーター、縁のある人々が登場して彩りを添えている。彼らは時にアンダーソンがキュレーションしたアイテムとともにフレームに収まっているのもウィットに富んでいて楽しい。

Resort 2026コレクションのルックブックより。古い銅製のじょうろやアイリッシュリネンのティークロスなどもアンダーソンによって選ばれた品だ courtesy of JW Anderson
Resort 2026コレクションのルックブックより。古い銅製のじょうろやアイリッシュリネンのティークロスなどもアンダーソンによって選ばれた品だ courtesy of JW Anderson

 近年、ハイエンドなファッションブランドがライフスタイルグッズを店頭に並べているのは珍しいことではない。しかし、ここまでデザイナーの意志と嗜好を反映し、愛情を深く感じさせる品を揃えた店はそう多くはないのではないか。ますます進化を遂げていくであろう今後にさらなる期待が高まる。