第3章「宋代仏画の諸相」では、北宋・南宋期の宮廷や市井で制作された仏画の姿が展観される。代表作は国宝「孔雀明王像」である。病魔を祓う守護尊として信仰された孔雀明王の姿は、羽毛の一本一本まで精緻に描き込まれ、鮮やかな彩色と金泥によって荘厳な輝きを放つ。平面作品でありながら仏像に匹敵する立体感を備え、観る者を圧倒する神秘性を今なお宿している。宮廷画院の高度な技術と民間信仰の厚さが共鳴し、宋代仏画が宗教的熱情と美術的洗練を併せ持つことを明らかにしている。
次に焦点が当たるのが、第4章「牧谿と禅林絵画」である。日本に最も愛された中国画家・牧谿は、淡墨の妙を活かした水墨画を数多く残した。国宝「観音猿鶴図」はその代表例で、観音菩薩の傍らに猿と鶴を配した独特の構成で、禅的寓意を漂わせる。簡潔で粗放な筆致と余白の妙が禅の精神を視覚化し、日本の禅僧や画家たちに深い感銘を与えた。牧谿の影響は雪舟や等伯へと継承され、日本の禅林絵画の基盤を築いた。

後期展示:10月21日~11月16日
さらに第5章「高麗仏画と宋元時代」では、朝鮮半島における仏画制作が取り上げられる。仏教を篤く信奉した高麗は、中国との交流の中で独自の仏画を生み出した。重要文化財「弥勒下生変相図」李晟筆はその典型で、未来に弥勒菩薩が衆生を救済する場面を鮮やかな彩色と緻密な描写で描き出す。中国的要素を取り込みながらも柔らかな線と華麗な装飾性を備え、宋元仏画とは異なる独自の魅力を放っている。




















