西千葉エリア
隣駅の西千葉でもアートプロジェクトが各所で行われている。JR総武線西千葉駅の高架下では、全長18メートルにも及ぶ巨大な女神《臥遊-ガード下神殿-》が出現している。市民が日常における様々な悩みごとや希望を祈る場所を生み出したかったと語るアーティストの伊東敏光。ワークショップスペースでは、市民らが祈りや願いを言葉にする絵馬のような取り組みも行われている。


同じく高架下にある西千葉公園横のスペースでは、西尾美也による服に関するアートプロジェクト、まちばのまちばり展示「まちまちいちば」が展開されている。
昨年度に実施されていた同芸術祭のプレ会期中、西尾は街で集めた服を素材に工作的な服づくりを行うワークショップを市民の参加者らとともに実施。4回以上参加した市民は「まちまちテーラー」と認定され、この会場で参加者からのオーダーを受けることができるといった、服を通じた新たなコミュニケーションのかたちが創出されている。


現代アーティストの加藤翼は、千葉市美浜区の幸町団地で実施したフィールドワークとプロジェクトの記録とインタビューの映像を、Mikey HOUSEというスペースにて展示している。
労働者が多く集まる幸町団地には、その最初期から住み続ける後期高齢者と、そこに代わる労働力として移住してきた外国人が多く暮らしている。加藤はここに住む高齢者やその孫世代、そして外国人住民にインタビューを実施。そして、団地の一室を原寸で再現した構造体を広場に設置し、団地祭りにあわせてそれをロープでひっくり返すといった壮大なパフォーマンスを行った。住民たちがこのパフォーマンスに参加する様子は、様々なバックグラウンドを持つ人々による新たなコミュニティのかたちの現れとも言えるだろうか。

筆者がこの芸術祭に参加することができたのは1日きりであったが、これらのアートプロジェクトは、昨年度もしくは今年の春から継続して行われてきたアーティストと市民による成果のかたちである。そしてその成果は、会期中にもかたちを変え、様々な展開を見せてくれるはずだ。
日常のなかに現れる非日常、といった市民参加型の芸術祭。街ゆく人々はいまだその様子を不思議そうに眺めていたが、総合ディレクターの中村が「3年に1回の開催を続けていくことで、心開いた市民の方々が自ら参加し、行動できるようなものとしたい」と述べたように、今後この芸術祭がどのように展開され、地域そして市民に定着していくのか、その過程に関心が高まるものであった。



















