《アルト・クテロ》(2012)は、映画『ホース・マネー』にも使用されている、リスボンで暮らすカーボ・ヴェルデの移民たちの労働歌のタイトルだ。移民労働者が朗読をするように、たどたどしく呟くその歌詞と火山の映像がシンクロすることで、壮絶な苦難が静かに染み込むように伝えられる。

《ジ・エンド・オブ・ア・ラヴ・アフェア》(2003)は、コスタの初期作品だで、本展の締めくくりにふさわしい静けさを湛えている。窓の外を眺めつつ、風に揺れるカーテンに目をやる男性が1カット、映し出されているだけの本作は、何かが終わっていくときの郷愁や憐憫をただそこに留める。

コスタは本展を「各々、見る人のなかで編集し、自分の『インナービジョン』として持ち帰ってほしい」と語った。映画作品の断片を暗闇の中で拾い集め、他者の苦しみや悲しみを鑑賞者それぞれが、自らの経験に照らすようにして、つなぎ合わせていく。そんな稀有な体験ができる展覧会だ。



















