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「ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ」(東京都写真美術館)開幕レポート。暗闇のなかで拾い集める苦難と郷愁の断片【3/4ページ】

 コスタは映画『溶岩の家』(1994)で、西アフリカ沖の火山群島、カーボ・ヴェルデ共和国を舞台にした。ポルトガルの入植地であり、奴隷貿易の中継地として栄えたこの島に暮らす女性たちの顔をモチーフにしたインスタレーション《火の娘たち》(2019)は、肌のテクスチャを通して伝わってくるような感覚を見る者に与える。

展示風景より、ペドロ・コスタ《火の娘たち》(2019)

 《火の娘たち(2022)》(2022)もまた、カーボ・ヴェルデを舞台にした作品だ。同国のフォゴ島で1951年に起きた火山の噴火を発想源に、アントン・チェーホフ『三人姉妹』を呼応させながら構築したインスタレーションは、3チャンネルに映し出される。孤独や苦難を歌う彼女たちの息遣いが、まるで火山から噴き出す溶岩のように見る者に迫ってくる。

展示風景より、《火の娘たち(2022)》(2022)

編集部