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「VOCA展2025」(上野の森美術館)開幕レポート。平面表現の「多様性」を改めて見つめる機会に【2/3ページ】

 実父との違和感を起点に、「家」や「家族」「他者」とのコミュニケーションをテーマとした作品制作を行う宮本華子は、祖父母との暮らしとその別れで感じたどうしようもなさをもとに受賞作品《在る家の日常》を制作した。家をかたどったパネルには映像が組み込まれ、日常的な風景や祖父母との暮らし、訪問介護の様子などが映し出されている。

 今回の受賞について、宮本は次のようにコメントを述べた。「今回VOCA展に推薦いただいたのは2回目。2020年にNerholのお二人が受賞した際も2回目の出展で、勇気をもらうことができた。《在る家の日常》をつくることができたのは祖父母との暮らしがあったからであり、訪問介護の皆さんをはじめとする協力したくださった方々のおかげ。本当に感謝したい」。

展示風景より、宮本華子《在る家の日常》
宮本華子《在る家の日常》(部分) 撮影=手塚なつめ

 諫山元貴による映像作品《Objects#21》では、文化的背景を持つオブジェクトが水中で崩壊していく様子が、実際の速度で映像化されて並べられている。それぞれ異なる時間の流れを持つため、作品には始点も終点もない。たしかに存在する時間の流れが、絵画的にそこにとどまっている。

展示風景より、諫山元貴《Objects#21》
展示風景より、諫山元貴《Objects#21》(部分)

 小林万里子の《The Five Domains》は、染め・織り・刺繍などの技法を用いて重層的かつ密度の高いビジュアルを生み出している。大きな葉や実とともに形づくられたスズメのなかには、群れをなした小さな生き物たちが生き生きと表現されており、自然との豊かな共生の在り方も感じ取れる。小林はこの作品を通じて、歯止めの効かない人間による環境破壊に警鐘を鳴らしている。

展示風景より、小林万里子《The Five Domains》
展示風景より、小林万里子《The Five Domains》(部分)。素材には、自身で染めた布や糸なども用いられている

編集部

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