第四章では、歌川国貞の肉筆画帖であり、極彩色で細密に描かれた「芝居町 新吉原風俗絵鑑」に目を凝らしたい。同作は、江戸の二大歓楽街である芝居町と新吉原の情景を6図ずつ、合計12図とした大画面のアルバム。歌舞伎小屋での1日を場面ごとに描き、役者絵のバリエーションをも網羅する力作だ。
本作は無落款ではあるものの、描写力などから役者絵と美人画でならした国貞(三代豊国)以外に描ける絵師はいないとされ、現在では国貞の作とされている。本展では芝居町の6図が通期で見られる。
なお、本展では大河ドラマ『べらぼう』でも注目を集める版元・蔦屋重三郎の小特集も見どころのひとつ。蔦屋重三郎が打ち出した歌麿やその弟子たち、写楽周辺の絵師たちの作品とともに、いまはなき蔦重の墓碑の拓本という貴重な資料も見ることができる。