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「花器のある風景」(泉屋博古館東京)開幕レポート。名脇役としての「花器」の変遷をたどる【2/2ページ】

 今回もっとも広い展示室では、同時開催となる「大郷理明コレクションの花器」展が第三章として展示されている。ここでは、華道家・大郷理明より近年寄贈された同氏による銅器、陶磁器、漆器の花器コレクションが数多く紹介されており、「いけばな」という総合芸術を構成する要素のひとつとしての「花器」にフォーカスするものとなっている。

展示風景より

 その佇まいを比較してみると、シンプルなものからいまにも動き出しそうなものまでと多種多様であることに気がつく。また、古代中国に由来する伝統的な鋳金技術、そして江戸時代の日本から受け継がれている独自の表面着色技術もその表情から読み取ることができ、花を美しく見せるための様々な造形的な工夫が施されていることにも理解が深まるだろう。

展示風景より
展示風景より、横河九左衛門《紫銅牛形薄端》(19世紀)

 最終章となる「花入から花瓶へ─近代の花器─」では、江戸時代以降の近代における花器の変遷を取り上げている。ここでは、万国博覧会にてその技術力をアピールするために制作された美術工芸品や、国内外からの来賓をもてなす場に置かれた調度品までが並んでおり、欧米からの影響も見受けられるような華やかな意匠が印象的だ。

 「いけばな」など、「花を見る」「花を愛でる」という行為において、あくまでメインは「花」であって、「花器」にまで目を向ける機会はそう多くはないかもしれない。本展は、人々が花を楽しんできた文化をたどることで、それを引き立ててきた名脇役としての花器の在り方や、その変遷にも目を向けることができる貴重な機会となっている。

展示風景より、幹山伝七《色絵金彩花鳥模様耳付花瓶 1対》(19世紀)

編集部

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