第2章「過去の消滅 〜危機との対峙〜」では、第二次世界大戦後の混乱から高度経済成長期に起こった、歴史資料の保存について紹介する。
本展を開催している国立歴史民俗博物館は1983年の開館だが、60年代ごろより、あるべき国立の歴史博物館像については活発に議論されていた。会場では、同館設立のために出された意見や、当時のそしてさらにこの時期に設立が検討された同館についての議論を紹介。
例えば当時の、歴史資料を集積して中央に集めるという考え方に対しては、「現地保存」の観点から、各方面より多くの批判が集まった。歴史資料は地域のアイデンティティであり、その歴史を知る人々とともに当該地域にあるからこそ意味がある、という意見だ。こうした考え方は、やがて全国各地に郷土資料館がつくられる原動力にもなっていった。国立歴史民俗博物館は設立後もこうした批判にさらされることになり、収集についても制限を受けることになったが、本展ではこうした歴史も伝えている。
いっぽう、20世紀後半より全国各地で少子高齢化にともなう過疎化が問題視されるようになった。過疎化が進む現代においては、地域の歴史資料の継承が大きな課題となっている。
例えば1990年代ごろまで、昭和初期まで使われていた生活用品や道具を収集する民具収集ブームがあった。こうした民具は郷土資料として全国各地で集められたものの、そのほとんどが活用されておらず、また少子高齢化による地方自治体の縮小により、保存と継承が大きな課題となっている。こうした民具をそのまま保存する以外にも、例えばデータ化したり、家具として活用するといった、新たな保存の方法も模索されていることを会場では知ることができる。
また、地域の資料保存のためには、資料保有者や地域住民との対話が不可欠だ。例えば、佐竹氏由来の様々な資料が地域内に存在する茨城県の常陸太田市は、こうした課題に対して意欲的な試みをおこなっており、気候の良い日に書物や美術品を虫干しする「曝涼」という作業を公開事業として行うことで、自治体や所有者との連帯をつくり、また文化財理解の足がかりとしている。