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「北アルプス国際芸術祭」開幕レポート。山とともにある人々の歴史と文化を感じる【5/7ページ】

仁科三湖エリア

 大町市の北の玄関口ともいわれる、青木湖、中綱湖、木崎湖からなる仁科三湖エリアでは、自然との強いつながりに焦点を当てた作品が集まっている。

 木崎湖畔に佇む仁科神社北側の鎮守の森では、カナダのアーティストデュオ、ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレットの《ささやきは嵐の目の中に》が展開。リサイクルしたメガネのレンズを使用して制作された作品だ。無数のレンズが雨だれのように杉林のなかで光を反射し、木々のあいだから覗く湖の湖面を映す。

展示風景より、ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレット《ささやきは嵐の目の中に》

 作品に使用されている各レンズはそれぞれ度数が異なり、周囲の景色を多様にとらえている。中心部には円形のベンチも設置され、森との関係を多彩な視点から感じることができるだろう。

展示風景より、ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレット《ささやきは嵐の目の中に》

 中綱湖の湖畔にあるふるさと創造館「ラーバン中綱」の体育館では、コタケマンが《やまのえまつり》を展開。コタケマンは17年の第1回からこの芸術祭に参加しており、今回は山の主を探し、敷き詰めた紙の上で、人々が踊りながら絵を描く祭りを開催した。こうしてできた縦35メートル、横15メートルの巨大な絵を分割して展示している。

展示風景より、コタケマン《やまのえまつり》

 祭りのあとにコタケマンによって屋外で整えられた本作は、風雨により線が流れるたびにまた描きなおすということを繰り返しながら制作された。こうした制作行為そのものが、まるで山の神と対話するような、自然環境との関係性に成り立っている作品だ。

展示風景より、コタケマン《やまのえまつり》

 ラーバン中綱の1階では、蠣崎誓が160種におよぶ植物素材を使い、大町の民話や生活、自然環境を表した作品《種の民話―たねのみんわ―》を制作。その多くは地域の人々から提供されたもので、会期終了後はそのまま自然に還す予定だ。

展示風景より、蠣崎誓《種の民話―たねのみんわ―》

 さらにラーバン中綱の2階では「カフェ&レストラン YAMANBA」も営業している。厳しい冬の寒さと山中の厳しい気候のなかで育まれた、味噌、漬物、乾物といった保存食文化を感じられる松花堂弁当を味わうことができる。

「カフェ&レストラン YAMANBA」の松花堂弁当

編集部

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