2024.2.20

山種美術館で見る「Seed 山種美術館 日本画アワード 2024」。日本画の新たな表現を探る

日本画の新たな創造を行う画家の発掘と育成を目指す公募展「Seed 山種美術館 日本画アワード 2024 ― 未来をになう日本画新世代 ―」が東京・広尾の山種美術館で開幕した。会期は3月3日まで。

文・撮影=安原真広(ウェブ版「美術手帖」副編集長)

展示風景より、左から前田茜《山に桜》、重政周平《素心蠟梅》、北川安希子《囁き―つなぎゆく命》、早川実希《頁(ページ)》
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 東京・広尾の山種美術館で日本画の新たな創造を行う画家の発掘と育成を目指す公募展「Seed 山種美術館 日本画アワード 2024 ― 未来をになう日本画新世代 ―」が開幕した。会期は3月3日まで。

展示風景より

 本アワードは2016年にスタートし、3年に1度開催されてきた。コロナ禍での2年の延期を経て、今年第3回の実施となり、153点の応募作品が集まった。本展はこのなかから、受賞作品を含めた入選作品全45点を一堂に展示するものだ。

展示風景より

 大賞を受賞したのは北川安希子《囁き―つなぎゆく命》だ。沖縄・西表島のオオタニワタリが生い茂るジャングルをモチーフにした本作は、亜熱帯の森林の木々を仰ぎ見るような構図で描いた作品だ。空から降り注ぐ陽光の明るさと、繁茂する生命力が対比された、臨場感あふれる一枚だ。

展示風景より、北川安希子《囁き―つなぎゆく命》

 優秀賞は重政周平《素心蠟梅》が受賞した。いつも見ている庭の植栽である蠟梅を描いたという本作。目を引くのは岩絵具の豊かな発色によって描かれた青色の葉だ。枝に乗った雪と相まって、冬の静謐な空気までも描き出した。

展示風景より、重政周平《素心蠟梅》

 特別賞は早川実希《頁(ページ)》と前田茜《山に桜》が受賞。いずれも銀箔による立体感のあるテクスチャが見る者の目を引く作品だ。

展示風景より、早川実希《頁(ページ)》
展示風景より、前田茜《山に桜》

 また、奨励賞は大村美玲《参星》、川村香月《宵桜》、小谷里奈《向こうの姿》、小針あすか《珊瑚の風》、仲村うてな《朱》、八谷真弓《みのりの
頃》が受賞している。いずれも、日本画の新たな表現の一端を垣間見える作品だ。

展示風景より

 なお、会期中には同館のコレクションの中から、村上華岳《裸婦図》、速水御舟《昆虫二題》、川端龍子《華曲》など、近代日本画の優品を厳選して展示する。こちらも併せて楽しみたいところだ。

展示風景より、速水御舟《昆虫二題》