2023年3月に都内で初めて「歩行者利便増進道路(以下、ほこみち)」として、利便増進誘導区域に指定された新虎通りで「ミューラルアートプロジェクト」がスタートした。同プロジェクトでゲストアーティストとして作品を手がけたのが、アメリカ・テキサス州出身のタイラー・ホッブス(Tyler Hobbs)だ。
2014年の開通当初、沿道の多くの建物が道路に背面を向けて建っていた新虎通り。そこに賑わいを創出すべく計画されたのが「ミューラルアート(ウォールアート)」だ。2017年には、日本のミューラルアーティストであるSAL・JONJON GREENによって新虎通りに面したカザマビルに作品が制作されている。
今回のゲストアーティストであるタイラー・ホッブスは、アルゴリズムを駆使した作品で世界的に有名な作家だ。大学でコンピュータサイエンスを学び、プログラマーとして働いていたホッブスは、2014年に自身の関心の対象であったアートとプログラミングを掛けあわせたジェネラティブアートを確立。現在も自身のコーディングのみで新たなアイデアを生み出し続けている。
同プロジェクトで描かれた《Two Lovers, in Structure》(2023)は、壁面が2つに分かれた建物の構造を生かし、恋人同士の関係性を表現。独自のアルゴリズムで生み出されたデザイン画のもと、ホッブス自身の手で描かれている。
作品の完成に伴い、ホッブスは次のようにコメントしている。「2つのセクションに描いたのは会話をする恋人。左は大胆、右は柔らかく優しい性格の持ち主で、これは実際の人間関係にもよく見られるダイナミズムだ。今回の作品で重視したのは、コンピュータで生み出されたビジュアルアイデアに人間味を持たせるという点であり、手描きの円形からは親しみやすさを感じてもらえるだろう。制作中は近所に住む人々の支援を受け、完成したときは喜んでくれた。ここに住む人々が楽しく暮らしてくれるのであれば喜ばしいことだ」。