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気鋭の写真家・顧剣亨。「デジタルウィービング」で見せる森の残像

金沢21世紀美術館の長期インスタレーションルームで、若手作家を紹介する「アペルト」シリーズの第18弾となる「顧剣亨 陰/残像」が開催されている。

文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

展示風景より

 金沢21世紀美術館が若手作家を中心に個展形式で紹介する展覧会シリーズ「アペルト」。その第18弾となる「顧剣亨 陰/残像」が、9月18日まで同館長期インスタレーションルームにて開催されている。担当学芸員は黒沢聖覇。

 顧剣亨(こ・けんりょう)は1994年京都生まれ、上海育ち。京都芸術大学、フランスのアルル国立高等写真美術学校で現代美術と写真を学び、現在は京都を拠点にグローバルな視点と切り口で精力的に活動を行う、新進気鋭の写真作家だ。世界各地を移動することで身体に蓄積される様々な風景やイメージの情報を、「写真」という装置を拡張的に用いることで、変換・再構成して作品化するという独自の表現方法を探究している。

顧剣亨

 顧剣亨の最大の特徴は、縦横1列ずつのピクセルを反復して複数の写真を織物のように編み込んでいく、「デジタルウィービング」という独自の手法を用いて作品を制作している点にある。デジタルではあるものの、その作業はすべて作家自らの手作業で行われており、作品には作家の身体性がそのまま内包されている。

展示風景より、《Mori, Shades_dw_002》(2023)
展示風景より、《Mori, Shades_dw_002》(2023)の部分
展示風景より、《Mori, Shades_dw_002》(2023)の部分

 本展では、中国・福建省の原始林など世界各地の森を高解像度カメラで撮影した大型の新作シリーズを展示。異なる時間や異なる場所が編み込まれたデジタルウィービングによる作品が展示室の両壁を埋め、正面には超高解像度のストレートフォトがそびえる。

 高さ5メートルや幅9メートルという、人間の身体感覚を超えた巨大な森のイメージ。その巨大さは観る者を圧倒するだけでなく、森の奥へ奥へと視線を誘う。目を凝らしたそこにある、顧が無意識のうちに生み出したピクセルの揺らぎ。それはきっと、観る者の感覚に揺さぶりをかけることだろう。

編集部

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