デジタル版を含むコミックスの累計発行部数が2000万部を突破し、アニメ第2期の放送も始まるなど、『鬼滅の刃』に並び、いまもっとも話題のアニメである『呪術廻戦』。そのアニメ第1期オープニングには、とある美術作品が登場していたことをご存知だろうか?
Eveの疾走感あるテーマソングとともに、オープニング(1分4秒の部分)で東堂葵(京都府立呪術高専3年)の背景に描かれたもの。それは《新宿の目》だ。
この作品は、1969年に彫刻家・宮下芳子が制作したパブリック・アート。新宿西口地下広場を都庁方面へと向かう角に、その作品はある。
当初はスバルビルのためにつくられたものだが、スバルビル解体後も作品は残され、新宿西口のアイコンとして存在し続けている。
瞳の高さは3.4メートル。横幅は10メートルにもおよぶ作品の内部には照明が埋め込まれており、新宿という喧噪の中で強い存在感を放つ。
このギラギラとした巨大な目はいったい何を表しているのか? 作者である宮下は、自身のウェブサイトで同作についてこう記している。
怪物的バイタリティを持つ新宿新都心が、現代日本の若さ、たくましさの象徴として世界に鳴りひびいている。 それは大きな大きな空問――その偉大な空間の整形を私は恐れも知らずに引き受けた。 底知れない力にみなぎっている怪物を、如何に表現したらいいのだろう…… そうだ!! 時の流れ、思想の動き、現代のあらゆるものを見つめる“目”二十一世紀に伝える歴史の“目”…もしかすると 遠く宇宙を見っめる“目”かも知れない。このような多次元の“目”こそ新都心のかなめ「スバルビル」には最 適、と思った。 ――さて、でき上ったきな十米近い大きな目玉の前に立ち、自信たっぷりにウィンクできるだろうか? (宮下芳子ウェブサイトより一部抜粋)
評論家で美術家の瀧口修造は「だから眼よ、おまえは昼も、夜も、絶えず見据えていなければならぬ」(同サイトより)と《新宿の目》に対して言及している。
つねに閉じることなく街を見つめ続けてきた巨大な「目」。これを機に、ぜひ一度実物を間近で鑑賞してほしい。