ピエール・セルネはフランス生まれ。パリのルーブル宮にあるレ・ザトリエ・デュ・カルーゼルで美術を学び、20代前半に写真の世界で働いた後、アメリカに渡りビジネス界で成功をおさめた。
世界最大規模を誇るファインアートのデータベース「artnet.com」の設立者としても知られるセルネは、近年再び美術の世界に戻り、精力的に作家活動に取り組み、アメリカ国内および世界各国の有名ギャラリーや美術館でパフォーマンスや個展を開催している。
作品を通して、世界の人々のあいだに存在する類似点を探求してきたセルネ。今回展示される「Synonyms(類似表現)」は、文化的、民族的に異なる背景を持つ、個人あるいはカップルのヌードを被写体としたシリーズだ。モノクロのシルエットによる抽象的な形態が特徴的な各作品のタイトルには被写体の名前がつけられており、それを通してのみ、彼・彼女の性別や国籍、文化的背景を推測することができる。
「私たちはそれぞれ他人とは異なる唯一無二な存在であるいっぽうで、普遍的な共通点を持っています。だからこそ、違う文化やライフスタイル、様々な人々をもっと受け入れるべき」と語るセルネの写真作品に邂逅するのは、東京・日本橋で東洋古陶磁を扱う浦上蒼穹堂・浦上満コレクションの珠玉の春画の数々だ。
江戸時代に浮世絵のジャンルとして人気を博した春画では様々な絵画的実験が試みられ、その大胆な構図や色彩は印象派の画家たちやパブロ・ピカソにも大きな影響を与えた。また近年では、2013年にイギリスの大英博物館、15年に東京の永青文庫でそれぞれ大規模な春画展が開催され、世界的な評価を得てきた。
セルネの写真と、鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿、葛飾北斎らの春画作品。フランスと日本、現代と江戸という、国や時代を越えたユニークなコントラストを堪能してほしい。