近代工芸の巨匠・香取秀真。松本市美術館で見るその哲学【4/4ページ】

 これら新しい展示作品に加え、同館では草間の代表的な作品群も引き続き展示されている。展示室を囲む鏡張りの壁に無数のシャンデリアが映り込む《傷みのシャンデリア》(2011)や、草間の代表的な「インフィニティ・ミラールーム」シリーズの《魂の灯》(2008)、同タイプの黄色いかぼちゃの彫刻のなかでは最大のサイズを誇る《大いなる巨大な南瓜》(2017)などでは、草間の芸術的な独創性と生命力が強く感じられる。

展示風景より、《傷みのシャンデリア》(2011)
展示風景より、《魂の灯》(2008)
展示風景より、《大いなる巨大な南瓜》(2017)

 そして、美術館の入り口に立つ高さ10メートルを超える巨大なパブリック彫刻《幻の華》(2002)は、世界中から訪れる鑑賞者を迎える作品。同作は草間の野外彫刻としては世界最大規模を誇り、同館の開館を記念して制作された。同館建物のガラスファサードは、高さ14メートル、長さ46メートルにおよぶ作品《松本から未来へ》(2016)が飾られており、草間の特徴的な水玉で覆われた作品は、力強く成長する生命のエネルギーが表現されている。

美術館正面にある《幻の華》(2002) 画像提供=松本市美術館
ガラスファサードの作品は《松本から未来へ》(2016) 画像提供=松本市美術館

 松本との深いつながりを持ちながら、日本工芸史に名を刻んだ香取秀真の軌跡をたどる「香取秀真展」と、草間彌生の創作活動を初期から現在まで幅広く紹介する特集展示「草間彌生 魂のおきどころ」。松本市美術館を訪れる機会があれば、このふたりの巨匠の作品とその背景にある物語に触れてみてはいかがだろうか。

編集部

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