今年3月に開館35周年を迎えた愛媛県の町立久万美術館が、現代画廊ゆかりの作家の作品を展示する「久万美の原点―洲之内徹」を開催する。会期は9月14日~12月8日。
町立久万美術館は、その根幹をなす井部栄治コレクションの多くが、美術評論家・洲之内徹が経営する現代画廊から購入された作品で構成されている。
洲之内は1913年愛媛県松山市生まれ。学生時代を市内で過ごし、30年に東京美術学校建築科に入学。左翼運動に従事したことで除名処分になり、松山に帰郷。逮捕を経て、転向を強いられた後は、軍嘱託として戦時の中国で過ごした。帰国後は小説を執筆し、数度の芥川賞候補にもなった洲之内。52年には再び上京し、61年に田村泰次郎から現代画廊の経営を引き継ぎ、87年に74歳で亡くなるまで、精力的に活動を続けた。また画廊経営の傍ら、『芸術新潮』誌上で美術エッセイ「気まぐれ美術館」を14年に渡って執筆し、数々の作家を取り上げてきた。
その独自の審美眼によって取り上げられた作家のなかには、当時まだ評価が定まっていなかった萬鐵五郎、村山槐多、長谷川利行など、いまや日本近代洋画史において重要な位置にある人物たちも含まれている。
今回、同館に現代画廊ゆかりの作品約70点が一括して寄贈されることになった。これは、寄贈者の故桑田勝美氏、後藤洋明氏、和田章一郎氏、山田和子氏ら5氏の協力を得て実現した。本展では、その作品を一堂に展覧。現代画廊ゆかりの作家を展示することで久万美術館の原点に立ち返るとともに、その精神が現代にどのように受け継がれているかを展望する。
出品作家は青山美野子、浅尾丁策、アリヨス・イエルチチ、池辺貞喜、井上員男、上原正三、宇野マサシ、海老原友忠、木下晋、鞍掛徳磨、高良真木、古茂田美津子、古茂田守介、斎藤和雄、佐藤泰治、ジャック・アクロイド、田上允克、田中岑、丹治日良、土井虎賀寿、徳本恭造、内藤堯雄、成川雄一、西阪修、橋本樸々、兵藤和男、三浦逸雄、水村喜一郎、緑川俊一、宮忠子、みよし、森田英二、山高登、横田海、吉永邦治、四方田草炎、若栗玄。
なお、9月14日15時から原田光(元岩手県立美術館館長、美術史家)と 後藤洋明(コレクター)を講師に迎えたトークイベント「現代画廊と洲之内徹」も開催される。あわせてチェックしてほしい。