3人の振付家による珠玉の作品を上演。「Dance Speaks 2024」が彩の国さいたま芸術劇場で開催へ

9月22日・23日の2日間、彩の国さいたま芸術劇場で3人の振付家による珠玉の作品を上演する「Dance Speaks 2024」が開催される。

 スターダンサーズ・バレエ団が9月22日・23日の2日間、「Dance Speaks 2024」を彩の国さいたま芸術劇場で開催する。

 今回のプログラムは、3人の振付家による3つの演目で構成されている。それを担うのは、世界有数のバレエカンパニー「ニューヨーク・シティ・バレエ」の創設者かつアメリカンバレエの⽣みの親でもある巨匠振付家ジョージ・バランシン、テクニカルで激しく意外な展開を見せる振付作品を次々に創作し、世界各地のバレエ団から引く手あまたのスペイン出身の振付家カィェターノ・ソト、そして日本人として初めて欧州の劇場で芸術監督を務めた気鋭の振付家・森優貴の3人だ。

 とくに注目したいのが、森優貴による新作だろう。森は、ドイツのニュルンベルグバレエ、トス・タンツカンパニーでダンサーとして活躍した後、2012年に34歳という若さでレーゲンスブルク歌劇場の芸術監督に就任。2016年にはドイツ舞台芸術界の栄誉あるファウスト賞振付家部門にて優秀作品賞を受賞し、現在は宝塚歌劇団公演の振付も手掛けるなど、その実力は折り紙付きだ。

 森がこのたび新たに振り付ける『Traum-夢の中の夢-』は、19世紀半ばにアメリカ文学の黄金時代を担った作家のひとり、エドガー・アラン・ポーが1849年に発表した詩「A Dream Within a Dream」から着想を得たもの。喪失、過去との決別、そして虚構と現実の狭間。アラン・ポーの人⽣に重なるかのような詩を題材に、その演出手腕が高く評価される森がどのような作品を創り上げるのか期待が高まる。また、京都を拠点に活動するデザイナー・鷲尾華子が手がける衣裳にも注目だ。世界初演となる今回を見逃す手はない。

森優貴
(c)田中みずき
『Traum-夢の中の夢-』リハーサル風景

 ジョージ・バランシンの演目は、『ワルプルギスの夜』。もともとはオペラ「ファウスト」の最終幕の冒頭で披露されるバレエシーンとして振り付けられたが、後に独立した作品となった。バランシンならではの音楽と一体となった振付が特徴だが、特にグラデーションを織りなす女性ダンサー24名が髪を振り乱しながら踊る圧巻のフィナーレは必見だ。

ワルプルギスの夜
(c)Hasegawa Photo Pro.

 カィェターノ・ソトが振り付けた『Malasangre』は、神戸に拠点を置く貞松・浜田バレエ団とスターダンサーズ・バレエ団の共同制作により2022年に日本初演された。ソトは、ラ・ルーペという名で知られるキューバの歌手、グアダルーぺ・ビクトリア・ヨリ・レイモンド(1939〜1992)へのオマージュ作品として、彼女が歌う楽曲を用いて本作を振り付けた。ラ・ルーペは、その挑発的なパフォーマンスから当時のキューバの独裁者フィデル・カストロに目にとまり、逃げるようにアメリカに移住。ラテンの女王として一時代を担うほどに成功し、アーネスト・ヘミングウェイ、ジャン・ポール・サルトル、マーロン・ブランドといった著名人に愛されながらも、その最期はニューヨークでの貧しい一人暮らしだったという。タイトルの「マラサングレ」はスペイン語で“悪い血”を意味し、ラテン音楽の軽快なリズムに乗せながら、偏見や先入観というネガティブな感情がもたらす影響力に焦点を当てるものとなっている。

マラサングレ
(c)Hasegawa Photo Pro

 20世紀のバレエ界を築いた偉大な振付家と、現代のコンテンポラリーダンスシーンを牽引する2人の振付家の作品が競演する今年の「Dance Speaks 2024」。世界のダンスの潮流を体感できる貴重な機会となることは間違いない。

編集部

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