パリを描く画家として日本でもっとも人気のある画家のひとりといえば、きっとモーリス・ユトリロ(1883〜1955)の名前が挙がるだろう。そんなユトリロの生誕140年にあたる今年、横浜高島屋では10年ぶりとなる回顧展が開催される。会期は9月13日〜10月2日。
ユトリロはフランス国家の勲章やパリ市民賞といった栄誉を得た人物だが、その人生は決して安寧なものではなかった。奔放な母親に育てられ、孤独な少年時代を過ごしたユトリロは子供のときから飲酒を始め、10代でアルコール依存症に陥る。その治療のために行ったことがユトリロの人生を変えた。絵を描くということだ。
ユトリロはすぐにその才能を発揮。初期のユトリロはやや暗い色調で風景画を描いており、その時代は「モンマニーの時代」と呼ばれている。そして1908年頃からは、ユトリロの代名詞とも言える「白の時代」が始まる。この時期の作品には白が印象的な建物や壁が多く描かれており、絵具に石膏や砂などを混ぜてリアルな質感を出した画風が特徴だ。
本展では、「モンマニーの時代」の作品や、全盛期の「白の時代」の作品30点以上が集結。初期から晩年まで、国内で所蔵されている貴重なユトリロ・コレクションが計約70点も展示される。ユトリロの生誕140年を記念するのにふさわしい、特別な展示となるだろう。