シンワオークション株式会社によるアートオークション「近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアート」が、6月6日15時より東京・銀座で開催された。同セールは、新型コロナウイルスの影響により延期されていた、3月28日に開催予定だったもの。
新型コロナウイルスへの対策もあり、会場への入場はすべて予約制。入口では来場者に対して検温と手指のアルコール消毒が施された。感染予防のため、書面や電話での入札が多いと思われたが、当日は会場に足を運ぶ人も多く見られた。
まず、下見会から注目を集めていたのが、加山又造のふたつの富士の大判の軸装作品だ。《不二》(1984)は色味の異なる金泥や金砂子を駆使して描かれた作品で、《青富士》(1978)は東京国立近代美術館に収蔵されている加山の代表作のひとつ《雪》《月》《花》が完成した1978年に描かれた鮮やかな色彩の作品だ。前者は予想落札価格1000万〜2000万円に対し1550万円で落札。後者は予想落札価格500万〜1000万円に対し、1100万円で落札された。
千住博も人気を集めており、《銀杏図》が予想落札価格30万〜50万円に対して185万円、《月下夜奏》が予想落札価格200万〜300万円に対し420万円と、予想を100万円以上上回る高値を記録した。
先日、訃報が伝えられたクリストのリトグラフのエディション作品も3点出品。今回の逝去にともない注目が集まったようで、3点のなかでもニューヨークのタイムズ・スクエアのビルを包むプロジェクトを描いた《Wrapping Building Project for 1 Times Square , New York》は、予想落札価格20万〜40万円に対し、54万円で競り落とされた。
日本の抽象絵画の先駆者と評される山口長男の《線》(1973)も、1000万〜1500万円と高い予想落札価格をつけた。赤茶色の面が大部分を占めるようなった時期の作品で、絵具が繰り返し塗り重ねられたことが伺える。作品は1000万円で落札された。
オークションの終盤には、モーリス・ユトリロ《郊外の通り》(1911頃)が登場。予想落札価格1500万〜2500万円に対し、1650万円で落札。これが今回のオークションの最高落札額となった。
新型コロナウイルスによる自粛解禁後のオークションではあったが、出品作品の価格帯が低めだったこともあり、ほとんどの出品作品に買い手がつく堅調さが目についたセールだった。