クリエイティブユニット・KIGI。「all is graphics」展でその10年の軌跡をたどる
クリエイティブユニットKIGIの10周年を記念した展覧会「all is graphics」が東京・代官山のヒルサイドフォーラムで11月27日まで開催されている。数多くの注目作品が並ぶ本展のハイライトをお届けする。
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植原亮輔と渡邉良重によるクリエイティブユニット・KIGI。その10周年を記念した展覧会「all is graphics」が東京・代官山のヒルサイドフォーラムでスタートした。会期は11月27日まで。
植原と渡邉はデザイン会社ドラフト在籍時から協働し、2012年にKIGI を設立。企業やブランドのアートディレクション、グラフィックデザイン、空間ディレクションやプロダクトデザインなど、いくつものプロジェクトを手がけてきた。
タイトル「all is graphics」が示すように、グラフィックデザインを起点にジャンルを越境しながら表現を続けてきたKIGI。本展は、ショップを含むA〜Gの7つの部屋で構成されており、その10年の軌跡を通覧するものとなっている。
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本展のメイン会場とも言える「room B」では、植原と渡邉が手がけてきたグラフィック、プロダクト、プライベートワークに至るまでの作品の数々が展示されている。グラフィックを起点に広告、パッケージデザイン、プロダクトデザイン、と多角的に世界観をつくり上げていくのも、KIGIのクリエイティブならではと言えるだろう。ほかにもクライアントワークの合間を縫って制作された各々のプライベートワークも展示。ペインティング作品からは、クライアントワークとは異なる、素のふたりがその姿をのぞかせているようである。
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ほかにも、同エリア2階にはKIGIのグラフィックデザインの数々や、KIGIのクリエイティブスタッフとして活躍する大坪メイ、サリーン・チェンの作品も紹介されている。
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本展ではKIGIとしての活動に加えて、植原と渡邉による個人のアートワークも数多く展示されている。「room C」では、渡邉のボールペン絵が原画となったテキスタイル作品からポスター、ぬいぐるみのデザイン、市原湖畔美術館で開催された展覧会「更級日記考」の出展作品「DANCE」(2019)などが紹介されており、渡邉の特徴とも言える素朴な手描きの風合いが自然と温かみある空間をつくり上げている。
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「room D」は植原によるアートワークをメインに展示。とくに植原のプライベートワークとして北海道や沖縄の「水」を特別な鏡を使って撮影し続けているプロジェクト「LIFEBLOOD」は、北海道と沖縄にゆかりのある植原ならではの作品。天から降る雨が川から海へと流れ、水蒸気となってまた天へと還る。そのとき様々な恵みを運ぶ一連の営みを「水は地球の血液」としてとらえられている点が印象的であった。
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「room E」では、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018」の展示企画にて発表された日本酒の立ち飲み屋「スタンディング酒BAR・酔独楽」のクリエイションを展示。接地面がなく独楽のように回る盃や、特別ラベルを施した地元の清酒を提供するなど、日本の伝統文化を随所に取り入れたプロジェクトととして仕立て上げた。ひとつの世界観をつくり上げることにより、アートディレクターとしてアートフェスティバルに参加することの意義を示した事例でもある。
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「room F」は、2021年に他界した渡邉の「母」を通じて紡がれた作品群だ。展示室には、渡邉の母が亡くなる3週間前の会話を綴った小冊子や、そこから渡邉の姉と続けられている刺繍作品、レースペーパーでつくられた色とりどりの作品が静かに設置されている。
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本展の開催に際し、KIGIがディレクションを務めた新たなアイウエア「TWO FACE」が登場した。正面と側面で「かけ姿」が異なるのが特徴で、その造形は折る、曲げるといった最小限の表現でかたちづくられている。TWO FACEという名前の通り、「スッキリ」と「無骨」をあわせ持つプロダクトとなっており、こちらも会場内ショップ(room G)にて先行予約販売が行われている。
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独自の世界観を確立している植原と渡邉。しかし、そのふたりがともに制作をすることで、アウトプットに対してより柔軟性や独創性、そして新たな可能性を生み出しているということを再認識させられた展覧会であった。KIGIが歩んだ10年の軌跡を膨大なクリエイティブを通じて振り返るとともに、これからの10年も続くであろうKIGIのパワーをぜひ現地で感じていただきたい。