明治から大正にかけて製作された刺繍絵画を紹介する展覧会「刺繍絵画の世界展 ‐明治・大正期の日本の美‐」が、日本橋髙島屋S.C. 本館8階ホール(8月24日〜9月12日)と京都髙島屋 7階グランドホール(9月15日〜26日)で開催される。
刺繍絵画とは、日本画家が描いた下絵をもとに、刺繍職人が針と糸で縫い上げた絵画を壁掛や衝立などに仕立てたもの。明治期を中心に、日本を代表する美術工芸品として盛んに製作され、技巧の限りが尽くされた作品群は日本刺繍の最高峰とも評されている。
また、国内だけでなく、海外の邸宅を彩る室内装飾品としても輸出され、さらには各国で盛んに開催されていた万国博覧会に出品されるなど、世界の人々の賞賛を受ける美術工芸品のひとつとなった。
当時、刺繍絵画の製作は髙島屋の三代、四代飯田新七と、現在、京友禅の老舗として知られる千總の十二代西村總左衛門などが主に担っていた。職人が、わずか1センチメートルほどの直線を一針一針、緻密に縫い上げることを繰り返して製作した作品。その多くは海外へ輸出され、現在もほとんど海外に所在しているという。
本展では、髙島屋史料館や清水三年坂美術館、千總、青木刺繍などが所蔵する数々の刺繍絵画や関連資料を紹介。とくに、髙島屋が明治から大正にかけて欧米に向け輸出し、100年を超えて日本へ里帰りした刺繍絵画《獅子図》が、画家・図案家として名高い神坂雪佳の弟である日本画家・神坂松濤が描いた下絵とともに展示される。
明治・大正期に盛んに製作され、日本が世界に誇る刺繍絵画。その絢爛で優美な世界をぜひ会場で堪能してほしい。